今回は、京都大学理系数学(2022年 第5問)の解説をしたいと思います。
問題
曲線 $C:y=\cos^3 x \ \left( 0 \leqq x \leqq \dfrac{\pi}{2} \right)$,$x$ 軸および $y$ 軸で囲まれる図形の面積を $S$ とする.$0 \lt t \lt \dfrac{\pi}{2}$ とし,$C$ 上の点 $\mathrm{Q}\left(t, \ \cos^3 t\right)$ と原点 $\mathrm{O}$,および $\mathrm{P}(t, \ 0)$,$\mathrm{R}\left(0, \ \cos^3 t\right)$ を頂点にもつ長方形 $\mathrm{OPQR}$ の面積を $f(t)$ とする.このとき,次の各問に答えよ.
⑴ $S$ を求めよ.
⑵ $f(t)$ は最大値をただ $1$ つの $t$ でとることを示せ.そのときの $t$ を $\alpha$ とすると,$f(\alpha)=\dfrac{\cos^4 \alpha}{3\sin \alpha}$ であることを示せ.
⑶ $\dfrac{f(\alpha)}{S} \lt \dfrac{9}{16}$ を示せ.
(京都大学)
解答
⑴
$0 \leqq x \leqq \dfrac{\pi}{2}$ において $\cos^3 x \geqq 0$ であり、$\cos^3 \dfrac{\pi}{2} = 0$ であるから、グラフの概形は次のようになる。
解法1
$$\begin{eqnarray}
S &=& \displaystyle \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \cos^3 x dx \\
&=& \displaystyle \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \left(1-\sin^2 x\right)\cos x dx \\
&=& \left[ \sin x \ – \ \dfrac{1}{3}\sin^3 x \right]_0^{\frac{\pi}{2}} \\
&=& \mathbf{\dfrac{2}{3}}
\end{eqnarray}$$
解法2
$\cos 3x = 4\cos^3 x \ – \ 3\cos x$ より $\cos^3 x = \dfrac{\cos 3x + 3\cos x}{4}$ なので
$$\begin{eqnarray}
S &=& \displaystyle \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \cos^3 x dx \\
&=& \displaystyle \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \dfrac{\cos 3x + 3\cos x}{4} dx \\
&=& \dfrac{1}{4} \left[ \dfrac{1}{3}\sin 3x + 3\sin x \right]_0^{\frac{\pi}{2}} \\
&=& \mathbf{\dfrac{2}{3}}
\end{eqnarray}$$
$$\mathbf{\dfrac{2}{3}}$$
⑵
$f(t) = t\cos^3 t$ より
$$\begin{eqnarray}
f'(t) &=& \cos^3 t + t \cdot 3\cos^2 t(-\sin t) \\
&=& \cos^3 t(1 -3t\tan t)
\end{eqnarray}$$
$g(t) = 1-3t\tan t$ とおくと、$0 \lt t \lt \dfrac{\pi}{2}$ において $f'(t)$ の符号は $g(t)$ の符号と一致し、$g(t)$ は単調減少である。
また
$$g(0) = 1\gt 0, \quad \displaystyle \lim_{ t \to \frac{\pi}{2} \ – \ 0 } g(t) = -\infty \lt 0$$より、$0 \lt t \lt \dfrac{\pi}{2}$ において $g(t)=0$ を満たす $t$ がただ $1$ つ存在する。
この値を $t=t_0$ とすると、$f(t)$ の増減表は次のようになる。
$$\begin{array}{c||c|c|c|c|c}\hline
t & (0) & \cdots & t_0 & \cdots & \left( \dfrac{\pi}{2} \right) \\ \hline
f’(t) & & + & 0 & – & \\ \hline
f(t) & & \nearrow & \text{最大} & \searrow & \\ \hline
\end{array}$$
増減表より、$f(t)$ は最大値をただ $1$ つの $t \ (=t_0)$ でとる。$$\tag{証明終}$$
題意より、$t_0=\alpha$ であるから
$$\begin{eqnarray}
g(\alpha) = 1-3\alpha \tan \alpha &=& 0 \\
\Longleftrightarrow \quad \alpha &=& \dfrac{\cos \alpha}{3\sin \alpha}
\end{eqnarray}$$であり、このとき
$$\begin{eqnarray}
f(\alpha) &=& \alpha \cos^3 \alpha \\
&=& \dfrac{\cos \alpha}{3\sin \alpha} \cdot \cos^3 \alpha = \dfrac{\cos^4 \alpha}{3\sin \alpha}
\end{eqnarray}$$$$\tag{証明終}$$
⑶
$$\begin{eqnarray}
g\left(\dfrac{\pi}{6}\right) &=& 1-3\cdot \dfrac{\pi}{6}\tan \dfrac{\pi}{6} \\
&=& 1-\dfrac{\pi}{2 \sqrt{ 3 }} = \dfrac{2 \sqrt{ 3 }-\pi}{2 \sqrt{ 3 }} \\
&\gt& \dfrac{2 \times 1.7-3.2}{2 \sqrt{ 3 }} \gt 0
\end{eqnarray}$$
$g(t)$ は単調減少なので、$\alpha \gt \dfrac{\pi}{6}$ である。
また $\dfrac{\cos^4 t}{\sin t} \ \left( 0 \lt t \lt \dfrac{\pi}{2} \right)$ について、$\cos^4 t$ は単調減少、$\sin t$ は単調増加であるから、$\dfrac{\cos^4 t}{\sin t}$ は単調減少である。
よって
$$\begin{eqnarray}
\dfrac{f(\alpha)}{S} &=& \dfrac{\cos^4 \alpha}{3\sin \alpha} \div \dfrac{2}{3} = \dfrac{\cos^4 \alpha}{2\sin \alpha} \\
&\lt& \dfrac{\cos^4 \dfrac{\pi}{6}}{2\sin \dfrac{\pi}{6}} = \dfrac{\left( \dfrac{\sqrt{ 3 }}{2} \right) ^4}{2 \times \dfrac{1}{2}} \\
&=& \dfrac{9}{16}
\end{eqnarray}$$$$\tag{証明終}$$
解説
⑴は単に計算するだけです。
$\cos^3 x$ の積分は、練習問題などで1度は経験しているはずの必修問題です。
⑵も証明問題ですから、流れに乗って計算すれば、安心して結論を導けるでしょう。
⑶は答えを見れば簡単ですが、なかなか初見では発想できないかもしれません。
反対に、
$$\dfrac{\cos^4 \dfrac{\pi}{6}}{2\sin \dfrac{\pi}{6}} = \dfrac{\left( \dfrac{\sqrt{ 3 }}{2} \right)^4}{2 \times \dfrac{1}{2}} = \dfrac{9}{16}$$に気づければ、この問題はもらったも同然でしょう。
また、$\alpha \gt \dfrac{\pi}{6}$ を示す上で、本解答では $\pi \lt 3.2$ を用いました。$\pi \fallingdotseq 3.14$ は常識ですから、この式も当たり前に使えそうです。
使えそうですが、果たして「自明」と言って良いのでしょうか?
「正多角形に内接する円」など余計なことを考えなくて良いように、「 $\pi \lt 3.2$ は証明なしに用いてよい」などの文言があればなお良かったかなと思います。
まとめ
今回は、京都大学理系数学(2022年 第5問)の解説をしました。
ほかの問題にもチャレンジしよう!
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