数学過去問解説

京都大学 理学部特色入試(数学)2022年度 第1問 解説

ゆーきち
ゆーきち
こんにちは、ゆーきちです!

今回は、京都大学理学部特色入試・数学(2022年度 第1問)の解説をしたいと思います。

問題

 $n$ を正の整数とする.$P(x_1,x_2,\dots,x_n)$ を $x_1,x_2,\dots,x_n$ の $n$ 個の文字についてのある実数係数の多項式とする.整数の列 $\{a_n\}$ が次の性質 $(*)$ を満たすと仮定する.

 $(*)$ $n$ より大きいすべての整数 $i$ に対して $a_i = P(a_{i-n} , a_{i-n+1} , \dots , a_{i-1}).$
ただし,$P(a_{i-n} , a_{i-n+1} , \dots , a_{i-1})$ は多項式 $P(x_1,x_2,\dots,x_n)$ の文字 $x_1,x_2,\dots,x_n$ にそれぞれ $a_{i-n} , a_{i-n+1} , \dots , a_{i-1}$ を代入したものである.

 このとき,ある $2$ つの正の実数 $c,d$ が存在して,すべての正の整数 $i$ に対して
$$a_i \lt c^{d^{\hspace{1pt}i}}$$が成り立つことを示せ.

(京都大学)

※ $c^{d^{\hspace{1pt}i}} = c^{(d^{\hspace{1pt}i})}$ です。

解答

多項式 $P(x_1,x_2,\dots,x_n)$ の最高次の次数を $N$ 、項の個数を $M$ とおく。

$m_1,m_2,\cdots,m_n$ を $0$ 以上の整数とし、多項式 $P(x_1,x_2,\dots,x_n)$ の $x_1^{m_1}x_2^{m_2}\cdots x_n^{m_n}$ の係数を $t_{m_1,m_2,\cdots,m_n}$ とおく。また、すべての係数 $t_{m_1,m_2,\cdots,m_n}$ の絶対値のうち最大のものを $T$ とおく。

さらに、$|a_1|,|a_2|,\cdots,|a_n|$ のうち最大のものを $A$ とおく。

ここで、$c=MT+A+1, \ $$d=N+1$ とおくと、$c,d$ は多項式 $P(x_1,x_2,\dots,x_n)$ および数列 $\{a_i\}$ の初項から第 $n$ 項までで定義される値である。また、$M\geqq 1, \ $$T\geqq 0, \ $$A\geqq 0, \ $$N\geqq 0$ より、$c\geqq 1, \ $$d\geqq 1$ である。

以下、$c=MT+A+1, \ $$d=N+1$ のとき、すべての正の整数 $i$ に対して
$$|a_i| \lt c^{d^{\hspace{1pt}i}} \quad\cdots\text{①}$$が成り立つことを数学的帰納法により示す。

(ⅰ) $i=1,2,\cdots,n$ のとき
$$|a_i| \leqq A \lt c \leqq c^{d^{\hspace{1pt}i}}$$より成り立つ。

(ⅱ) $k \geqq n$ なる整数 $k$ に対して、$i=1,2,\cdots,k$ のとき①が成り立つと仮定する。

ここで、$c\geqq 1, \ $$d\geqq 1$ より
$$c^{d^1} \leqq c^{d^2} \leqq\cdots\leqq c^{d^k}$$であるから、仮定より $|a_i| \lt c^{d^k} \ \cdots\text{②}$ が成り立つ。

また、$P(a_{k-n+1} , a_{k-n+2} , \dots , a_{k})$ の各項の絶対値について
$$\begin{eqnarray}
&& |t_{m_1,m_2,\cdots,m_n}{a_{k-n+1}}^{m_1} {a_{k-n+2}}^{m_2} \cdots {a_{k}}^{m_n}| \\
&\leqq& T |a_{k-n+1}|^{m_1} |a_{k-n+2}|^{m_2} \cdots |a_{k}|^{m_n} \\
&\lt& T(c^{d^k})^{m_1}(c^{d^k})^{m_2} \cdots (c^{d^k})^{m_n} \ \text{(}\because\text{②)} \\
&\leqq& T(c^{d^k})^N \ \text{(}\because m_1+m_2+\cdots+m_n\leqq N \ \text{)}
\end{eqnarray}$$が成り立つ。

したがって、$i=k+1$ のとき
$$\begin{align}
|a_{k+1}| &= |P(a_{k-n+1} , a_{k-n+2} , \dots , a_{k})| \\
&\lt MT(c^{d^k})^N \\
&\lt c \cdot c^{Nd^k} \\
&\leqq c^{d^k} \cdot c^{(d-1)d^k} \ \text{(}\because N=d-1 \ \text{)} \\
&= c^{d^{k+1}}
\end{align}$$より、$i=k+1$ のときも成り立つ。

(ⅰ),(ⅱ)より①が成り立ち、$a_i \leqq |a_i|$ と合わせると $a_i \lt c^{d^{\hspace{1pt}i}}$ となる。

以上より、$c=MT+A+1, \ $$d=N+1$ のとき、すべての正の整数 $i$ に対して
$$a_i \lt c^{d^{\hspace{1pt}i}}$$が成り立つ。$$\tag{証明終}$$

解説

設定が抽象的なので、実験してみましょう。このとき、多項式 $P$ は $x_1$ から $x_n$ についての実数係数多項式としか言われていないので $x_1x_2$ のように違う文字どうしの積も含まれること、$c,d$ は $i$ と無関係な定数であることに注意しましょう。

例えば $P(x_1,x_2)=3x_1^7x_2-4x_2$( $n=2$ )としてみると
$$\begin{align}
a_3 &= P(a_1,a_2) \\
&= 3{a_1}^7a_2-4a_2
\end{align}$$となり、この値を上から押さえる( $\lt c^{d^{\hspace{1pt}i}}$ )ことを考えます。

$c,d$ は存在することが分かっており、大きく設定する分には問題ないので、大雑把に評価すると
$$\begin{align}
a_3 &= 3{a_1}^7a_2-4a_2 \\
&\leqq 4|a_1|^8+4|a_1|^8 \ \text{(} \ |a_1|\geqq|a_2| \ \text{とする)} \\
&= 2\cdot 4|a_1|^8
\end{align}$$となります。これと $c^{d^{\hspace{1pt}i}}$ の形を見比べてみると、$c$ には多項式 $P$ の項数や最大係数、数列 $\{a_n\}$ の最大値が関係し、$d$ には多項式 $P$ の最高次数が関係してくると推測できます。また正負の可能性があるものには絶対値を付ける必要があることもわかります。

あとは指数の大小がつねに成り立つように $c,d$ の値を設定すれば大丈夫です。

まとめ

今回は、京都大学理学部特色入試・数学(2022年度 第1問)の解説をしました。

ゆーきち
ゆーきち
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!