数学過去問解説

京都大学 理学部特色入試(数学)2022年度 第3問 解説

ゆーきち
ゆーきち
こんにちは、ゆーきちです!

今回は、京都大学理学部特色入試・数学(2022年度 第3問)の解説をしたいと思います。

問題

 $\Bbb{Z}^4$ を $4$ つの整数 $a_1,$ $a_2,$ $a_3,$ $a_4$ の組 $(a_1,a_2,a_3,a_4)$ 全体のなす集合とする.このとき,以下の条件をすべて満たすような $\Bbb{Z}^4$ の部分集合 $S$ が存在することを示せ.

(ⅰ) $(a_1,a_2,a_3,a_4) \in S$ ならば
$$(a_1)^2-(a_2)^2+(a_3)^2-(a_4)^2=1$$が成り立つ.

(ⅱ) $S$ は無限集合である.

(ⅲ) $6$ つの整数の組 $(d_1,d_2,d_3,d_4,d_5,d_6)$ で $(d_1,d_2,d_3,d_4)\ne(0,0,0,0)$ を満たす任意のものに対し,$S$ の部分集合
$$\{ (a_1,a_2,a_3,a_4) \ | \ (a_1,a_2,a_3,a_4)\in S \ \text{かつ} \ d_1a_1+d_2a_2=d_5 \ \text{かつ} \ d_3a_3+d_4a_4=d_6 \}$$は有限集合である.

(京都大学)

解答

$$S=\{ (4n^2+1, \ 3n, \ n, \ 4n^2) \ | \ n \ \text{は整数} \}$$がすべての条件を満たすことを示す。

$(a_1,a_2,a_3,a_4) \in S$ ならば
$$\begin{eqnarray}
&& (a_1)^2-(a_2)^2+(a_3)^2-(a_4)^2 \\
&=& (4n^2+1)^2 – \ (3n)^2 + n^2 – \ (4n^2)^2 \\
&=& 16n^4 + 8n^2 + 1 \ – \ 9n^2 + n^2 – \ 16n^4 \\
&=& 1
\end{eqnarray}$$より、(ⅰ)を満たす。

$n$ が異なれば $(4n^2+1, \ 3n, \ n, \ 4n^2)$ も異なり $S$ は無限集合となるため、(ⅱ)を満たす。

$(a_1,a_2,a_3,a_4) \in S$ のとき
$$\begin{align}
&\left\{ \begin{aligned} d_1a_1+d_2a_2 &= d_5 \\ d_3a_3+d_4a_4 &= d_6 \end{aligned} \right. \\
\Longleftrightarrow \ &\left\{ \begin{aligned} d_1(4n^2+1)+d_2 \cdot 3n &= d_5 \\ d_3 \cdot n + d_4 \cdot 4n^2 &= d_6 \end{aligned} \right. \\
\Longleftrightarrow \ &\left\{ \begin{aligned} 4d_1n^2+3d_2n +d_1-d_5 &= 0 \quad\cdots\text{①} \\ 4d_4n^2 + d_3n -d_6 &= 0 \quad\cdots\text{②} \end{aligned} \right.
\end{align}$$$(d_1,d_2,d_3,d_4)\ne(0,0,0,0)$ すなわち $d_1,$ $d_2,$ $d_3,$ $d_4$ のうち少なくとも $1$ つは $0$ でないので、①,②の $n^2,$ $n$ の係数のうち少なくとも $1$ つは $0$ でない。

よって、$n$ の方程式①,②のうち少なくとも $1$ つは「 $1$ 次方程式または $2$ 次方程式」であるから、①かつ②を満たす $n$ の個数は高々 $2$ 個である。

したがって、$S$ の部分集合
$$\{ (a_1,a_2,a_3,a_4) \ | \ (a_1,a_2,a_3,a_4)\in S \ \text{かつ} \ d_1a_1+d_2a_2=d_5 \ \text{かつ} \ d_3a_3+d_4a_4=d_6 \}$$は有限集合であり、(ⅲ)を満たす。

以上より、すべての条件を満たす $S$ の存在が示された。$$\tag{証明終}$$

解説

いろいろ実験と思考が必要な問題です。適切な $S$ が見つかれば、条件を満たすことを示すのは簡単なので、$S$ を作れるかどうかが山場です。

まず(ⅰ)から、$S=\{(1,0,0,0)\}$ のような定数の組が思いつきますが、これでは無限集合とは言えません。このことから、$n$(文字)を入れないといけないことが分かります。ただし、$1$ つでも定数が入っていると、条件(ⅲ)でうまく $(d_1,d_2,d_3,d_4)$ を決めて「(定数)$+0\cdot n=$(定数)」とすることで $S$ の部分集合が無限集合となってしまうので、すべての要素に $n$ を入れなければならないことがわかります。

さらに、「 $a_1$ と $a_2$ 」あるいは「 $a_3$ と $a_4$ 」が同じ次数だとしても、条件(ⅲ)に反するパターンが見つかります。

これらをうまく避けて $S$ を構成しましょう。ちなみに、$S$ の他の例としては、$(3n^2+1, \ 4n, \ 2n, \ 6n^2)$ や $(8n^2+1, \ 5n, \ 3n, \ 8n^2)$ などたくさんあります。

まとめ

今回は、京都大学理学部特色入試・数学(2022年度 第3問)の解説をしました。

ゆーきち
ゆーきち
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!