数学過去問解説

京都大学 理系数学 2020年 第2問 解説

ゆーきち
ゆーきち
こんにちは、ゆーきちです!

今回は、京都大学理系数学(2020年 第2問)の解説をしたいと思います。

問題

 $p$ を正の整数とする.$\alpha,\beta$ は $x$ に関する方程式 $x^2-2px-1=0$ の $2$ つの解で,$|\alpha|\gt1$ であるとする.

⑴ すべての正の整数 $n$ に対し,$\alpha^n+\beta^n$ は整数であり,さらに偶数であることを証明せよ.

⑵ 極限 $\displaystyle\lim_{n\to\infty}(-\alpha)^n\sin(\alpha^n\pi)$ を求めよ.

(京都大学)

解答

解と係数の関係より
$$\left\{
\begin{alignat}{2}
\alpha+\beta&=2p& &\quad\cdots\text{①} \\
\alpha\beta&=-1& &\quad\cdots\text{②}
\end{alignat}
\right.$$が成り立つ。

題意が成り立つことを数学的帰納法により示す。

(ⅰ) $n=1$ のとき
①と $p$ が整数であることから成り立つ。

(ⅱ) $n=2$ のとき
$$\begin{align}
\alpha^2+\beta^2 &= (\alpha+\beta)^2-2\alpha\beta \\
&= (2p)^2-2\cdot(-1) \\
&= 2(2p^2+1)
\end{align}$$となり、$2p^2+1$ は整数なので成り立つ。

(ⅲ) $n=k,k+1$($\,k=1,2,3,\cdots\,$)のとき題意が成り立つ、すなわち整数 $\ell,m$ を用いて
$$\alpha^k+\beta^k=2\ell,\quad\alpha^{k+1}+\beta^{k+1}=2m$$と表せると仮定すると
$$\begin{align}
\alpha^{k+2}+\beta^{k+2} &= (\alpha^{k+1}+\beta^{k+1})(\alpha+\beta)-\alpha\beta(\alpha^k+\beta^k) \\
&= 2m\cdot2p-(-1)\cdot2\ell \\
&= 2(mp+\ell)
\end{align}$$となり、$mp+\ell$ は整数なので成り立つ。

(ⅰ),(ⅱ),(ⅲ)より、すべての正の整数 $n$ に対して題意が成り立つことが示された。$$\tag{証明終}$$

②より $\beta\ne0$ なので $-\alpha=\dfrac{1}{\beta} \ \cdots\text{③}$ である。

したがって
$$\begin{align}
(-\alpha)^n\sin(\alpha^n\pi) &= \left(\dfrac{1}{\beta}\right)^n\sin\{(\alpha^n+\beta^n)\pi-\beta^n\pi\} \\[0.2em]
&= \dfrac{1}{\beta^n}\sin(-\beta^n\pi) \\
&\hphantom{=}\text{(}\because\text{⑴より} \ \alpha^n+\beta^n \ \text{は偶数)} \\[0.2em]
&= \dfrac{-\pi\sin(\beta^n\pi)}{\beta^n\pi}
\end{align}$$

ここで、③より
$$1\lt|\alpha|=|-\alpha|=\left|\dfrac{1}{\beta}\right|=\dfrac{1}{|\beta|}$$であるから $|\beta|\lt1$ である。

よって
$$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\beta^n\pi=0$$であるから
$$\begin{align}
\displaystyle\lim_{n\to\infty}(-\alpha)^n\sin(\alpha^n\pi) &= \displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{-\pi\sin(\beta^n\pi)}{\beta^n\pi} \\[0.3em]
&= \boldsymbol{-\pi}
\end{align}$$

答え

$$\boldsymbol{-\pi}$$

解説

⑴は、数学的帰納法を使う基本問題です。

⑵は、絶対値が $1$ よりも大きい $\alpha$ のままで考えてもなかなかうまくいきません。
特に、$\sin$ の極限から $\dfrac{\sin(\alpha^n\pi)}{\alpha^n\pi}$ としてみても、$\alpha^n\pi$ が $0$ に収束しないので意味がありません。

そこで、$\beta$ を使うことを考えると、⑴で示した $\alpha^n+\beta^n$ が「偶数」であることを使って上手くいくことが分かります。

まとめ

今回は、京都大学理系数学(2020年 第2問)の解説をしました。

ゆーきち
ゆーきち
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!