今回は、大阪大学理系数学(2022年 第4問)の解説をしたいと思います。
問題
$f(x)=\log (x+1)+1$ とする.以下の問いに答えよ.
⑴ 方程式 $f(x)=x$ は,$x\gt 0$ の範囲でただ $1$ つの解をもつことを示せ.
⑵ ⑴の解を $\alpha$ とする.実数 $x$ が $0 \lt x\lt \alpha$ を満たすならば,次の不等式が成り立つことを示せ.
$$0\lt \dfrac{\alpha -f(x)}{\alpha -x}\lt f'(x)$$⑶ 数列 $\{x_n\}$ を
$$x_1=1,\quad x_{n+1}=f(x_n)\quad(n=1,2,3,\cdots\cdots)$$で定める.このとき,すべての自然数 $n$ に対して,
$$\alpha -x_{n+1}\lt\dfrac{1}{2}(\alpha-x_n)$$が成り立つことを示せ.⑷ ⑶の数列 ${x_n}$ について,$\displaystyle\lim_{n\to\infty}x_n=\alpha$ を示せ.
(大阪大学)
解答
⑴
$g(x)=f(x)-x=\log (x+1)-x+1$ とおく。
$x \gt 0$ において
$$\begin{eqnarray}
g'(x)=\dfrac{1}{x+1}-1=\dfrac{-x}{x+1}\lt 0
\end{eqnarray}$$より、$x \gt 0$ において $g(x)$ は単調減少である。
ここで
$$\begin{eqnarray}
g(0)&=&1 \gt 0, \\[0.3em]
g(3)&=&\log 4-2=2(\log 2-1)\lt 0
\end{eqnarray}$$より、$g(x)=0$ すなわち $f(x)=x$ は $x\gt 0$ の範囲でただ $1$ つの解をもつ。$$\tag{証明終}$$
⑵
平均値の定理より、$0 \lt x\lt \alpha$ を満たす実数 $x$ に対して、
$$\dfrac{f(\alpha)-f(x)}{\alpha-x}=f'(c), \quad x\lt c\lt \alpha$$を満たす $c$ が存在する。
ここで、$\alpha$ は方程式 $f(x)=x$ の解なので $f(\alpha)=\alpha$
また $f'(x)=\dfrac{1}{x+1}$ と $0\lt x\lt c$ より
$$0\lt \dfrac{1}{c+1}=f'(c)\lt \dfrac{1}{x+1}=f'(x)$$
よって
$$0\lt \dfrac{\alpha -f(x)}{\alpha -x}\lt f'(x)$$$$\tag{証明終}$$
⑶
⑴より、$g(1)=\log 2\gt 0$ かつ $g(x)$ は $x \gt 0$ において単調減少なので、$\alpha\gt 1$ である。
ここで、すべての自然数 $n$ に対して $1\leqq x_n\lt\alpha \quad\cdots\text{①}$ が成り立つことを数学的帰納法により示す。
(ⅰ) $n=1$ のとき
$x_1=1$ より成り立つ。
(ⅱ) $n=k$( $k$ は自然数)のとき $1\leqq x_k\lt\alpha$ が成り立つと仮定すると、$x\gt 0$ において $f'(x)=\dfrac{1}{x+1}\gt 0$ より $f(x)$ は単調増加であるから、
$$\begin{array}{c}
f(1)\leqq f(x_k)\lt f(\alpha) \\[0.3em]
\log 2+1\leqq x_{k+1}\lt \alpha
\end{array}$$$1 \lt \log 2+1$ より $1\leqq x_{k+1}\lt \alpha$ となり、$n=k+1$ のときも成り立つ。
(ⅰ),(ⅱ)より、すべての自然数 $n$ に対して①が成り立つことが示された。
したがって、⑵と①より、 $x=x_n$ とすると
$$0\lt \dfrac{\alpha -f(x_n)}{\alpha -x_n}\lt f'(x_n)=\dfrac{1}{x_n+1}\leqq\dfrac{1}{2}$$$f(x_n)=x_{n+1}$ であり、①より $\alpha-x_n\gt 0$ であるから
$$\alpha -x_{n+1}\lt\dfrac{1}{2}(\alpha-x_n)$$$$\tag{証明終}$$
⑷
⑶と①より、十分大きな自然数 $n$ に対して
$$\begin{eqnarray}
0\lt \alpha-x_n &\lt& \dfrac{1}{2}(\alpha-x_{n-1}) \\
&\lt& \left(\dfrac{1}{2}\right)^2(\alpha-x_{n-2}) \\[0.3em]
&\lt& \cdots \\[0.2em]
&\lt& \left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}(\alpha-x_1)=\dfrac{\alpha-1}{2^{n-1}}
\end{eqnarray}$$が成り立つ。
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{\alpha-1}{2^{n-1}}=0$ なので、はさみうちの原理より
$$\displaystyle\lim_{n\to\infty}(\alpha-x_n)=0$$
よって
$$\displaystyle\lim_{n\to\infty}x_n=\alpha$$$$\tag{証明終}$$
解説
⑴では $g(3)\lt 0$ という具体的な値での評価を用いましたが、
$$\begin{eqnarray}
\displaystyle\lim_{x\to\infty}g(x) &=& \displaystyle\lim_{x\to\infty}\log (x+1)-x+1 \\
&=& \displaystyle\lim_{x\to\infty}\log\left(\dfrac{x+1}{e^x}\right)+1 \\
&=& -\infty \lt 0
\end{eqnarray}$$と評価しても問題ありません。
⑶がこの問題最大の山場ですが、⑵を上手く使うためにはどうすればよいかを、逆算的に考えていきましょう。
まとめ
今回は、大阪大学理系数学(2022年 第4問)の解説をしました。
ほかの問題にもチャレンジしよう!
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