今回は、京都大学理系数学(2022年 第3問)の解説をしたいと思います。
問題
$n$ を自然数とする.$3$ つの整数 $n^2+2, \ n^4+2, \ n^6+2$ の最大公約数 $A_n$ を求めよ.
(京都大学)
解答
整数 $a,b$ の最大公約数を $\mathrm{gcd}(a,b)$ と書く。
$n^4+2 = \left(n^2+2\right)\left(n^2-2\right)+6$ より
$$\mathrm{gcd}\left(n^4+2,n^2+2\right) = \mathrm{gcd}\left(n^2+2,6\right) \quad \cdots \text{①}$$
また、$n^6+2 = \left(n^2+2\right)\left(n^4-2n^2+4\right)-6$ より
$$\begin{eqnarray}
\mathrm{gcd}\left(n^6+2,n^2+2\right) &=& \mathrm{gcd}\left(n^2+2,-6\right) \\
&=& \mathrm{gcd}\left(n^2+2,6\right) \quad \cdots \text{②}
\end{eqnarray}$$
①,②より
$$A_n = \mathrm{gcd}\left(n^2+2,6\right)$$
よって、$n$ を $6$ で除した余りで分類すると、次の表のとおりである。
$n$ ($6$ で除した余り) |
$0$ | $1$ | $2$ | $3$ | $4$ | $5$ |
$n^2+2$ | $2$ | $3$ | $6$ | $11$ | $18$ | $27$ |
$A_n$ | $2$ | $3$ | $6$ | $1$ | $6$ | $3$ |
したがって、
$$\begin{eqnarray}
\boldsymbol{A_n =}
\begin{cases}
\boldsymbol{1} & \boldsymbol{(n \equiv 3)} \\
\boldsymbol{2} & \boldsymbol{(n \equiv 0)} \\
\boldsymbol{3} & \boldsymbol{(n \equiv 1,5)} \\
\boldsymbol{6} & \boldsymbol{(n \equiv 2,4)}
\end{cases}
\quad \mathbf{(mod \ 6)}
\end{eqnarray}$$
$$\begin{eqnarray}
\boldsymbol{A_n =}
\begin{cases}
\boldsymbol{1} & \boldsymbol{(n \equiv 3)} \\
\boldsymbol{2} & \boldsymbol{(n \equiv 0)} \\
\boldsymbol{3} & \boldsymbol{(n \equiv 1,5)} \\
\boldsymbol{6} & \boldsymbol{(n \equiv 2,4)}
\end{cases}
\quad \mathbf{(mod \ 6)}
\end{eqnarray}$$
解説
最大公約数に関する問題では、「ユークリッドの互除法の原理」が有効です。
$a, \ b, \ q, \ r$ を $0$ でない整数とする。
$a=bq+r$ ならば $\mathrm{gcd}(a,b)=\mathrm{gcd}(b,r)$
また、解答で $\mathrm{gcd}\left(n^2+2,-6\right) = \mathrm{gcd}\left(n^2+2,6\right)$ という式が出てきましたが、これは $-6$ と $6$ の約数が全く同じなので成り立ちます。
単に「約数」というと正負両方の数を考えますから、$-6$ も $6$ もその約数は $-6,-3,-2,-1,1,2,3,6$ となるのです。
さらに、$n^4+2$ と $n^6+2$ の最大公約数を考えなくて良いのか、と疑問に思う方もいるかもしれませんね。結論から言うと、考える必要はありません。
なぜかというと、
$$\begin{eqnarray}
\mathrm{gcd}\left(n^4+2,n^2+2\right) &=& \mathrm{gcd}\left(n^6+2,n^2+2\right) \\
&=& \mathrm{gcd}\left(n^2+2,6\right) \quad \cdots \text{①}
\end{eqnarray}$$が成り立った時点で、$n^4+2$ も $n^6+2$ も共通の約数「 $\mathrm{gcd}\left(n^2+2,6\right)$ 」を持っています。
$n$ によってはさらに他の公約数を持っているかもしれませんが、それは $A_n$ には影響を及ぼしません。
すなわち、①が成り立った時点で、$A_n = \mathrm{gcd}(n^2+2,6)$ と結論づけて良いのです。
まとめ
今回は、京都大学理系数学(2022年 第3問)の解説をしました。
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