数学過去問解説

神戸大学 理系数学 2022年[後期] 第3問 解説

ゆーきち
ゆーきち
こんにちは、ゆーきちです!

今回は、神戸大学理系数学(2022年後期 第3問)の解説をしたいと思います。

問題

以下の問に答えよ.

⑴ $t\geqq 0$ とする.$t-\dfrac{1}{6}t^3\leqq\sin t\leqq t$ を示せ.

⑵ 数列 $\{a_n\}$ を $a_n=\displaystyle\int_{n^2}^{n^2+n}\sqrt{x}\sin\dfrac{1}{x}dx$$\text{(} \ n=1,2,3,\cdots \ \text{)}$によって定める.極限値 $\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n$ を求めよ.

(神戸大学)

解答

$$\begin{align}
f(t) &= t-\sin t, \\
g(t) &= \sin t-\left(t-\dfrac{1}{6}t^3\right)
\end{align}$$とする。

$$f'(t)=1-\cos t\geqq 0$$より $f(t)$ は単調増加であり、$f(0)=0$ なので、$f(t)\geqq 0$ すなわち
$$\sin t\leqq t \quad\cdots\text{①}$$である。

また
$$\begin{align}
g'(t) &= \cos t-1+\dfrac{1}{2}t^2, \\
g^{\prime\prime}(t) &= -\sin t +t\geqq 0 \ \text{(}\because\text{①)}
\end{align}$$より $g'(t)$ は単調増加であり、$g'(0)=0$ なので、$g'(t)\geqq 0$ である。

よって $g(t)$ は単調増加であり、$g(0)=0$ なので、$g(t)\geqq 0$ すなわち
$$t-\dfrac{1}{6}t^3\leqq\sin t \quad\cdots\text{②}$$である。

①,②より
$$t-\dfrac{1}{6}t^3\leqq\sin t\leqq t \quad\cdots\text{③}$$$$\tag{証明終}$$

$n\gt 0$ より、$0\lt n^2\leqq x\leqq n^2+n$ の範囲においては $\dfrac{1}{x}\gt 0$ であるから、③より
$$\dfrac{1}{x}-\dfrac{1}{6x^3}\leqq\sin\dfrac{1}{x}\leqq\dfrac{1}{x}$$が成り立ち、各辺に $\sqrt{x}\text{(}\gt 0 \ \text{)}$をかけると
$$x^{-\frac{1}{2}}-\dfrac{1}{6}x^{-\frac{5}{2}}\leqq\sqrt{x}\sin\dfrac{1}{x}\leqq x^{-\frac{1}{2}}$$となる。

各辺を $n^2\leqq x\leqq n^2+n$ の範囲で積分すると
$$\displaystyle\int_{n^2}^{n^2+n}\left(x^{-\frac{1}{2}}-\dfrac{1}{6}x^{-\frac{5}{2}}\right)dx\leqq\displaystyle\int_{n^2}^{n^2+n}\sqrt{x}\sin\dfrac{1}{x}dx\leqq\displaystyle\int_{n^2}^{n^2+n}x^{-\frac{1}{2}}dx$$すなわち
$$\displaystyle\int_{n^2}^{n^2+n}\left(x^{-\frac{1}{2}}-\dfrac{1}{6}x^{-\frac{5}{2}}\right)dx\leqq a_n\leqq\displaystyle\int_{n^2}^{n^2+n}x^{-\frac{1}{2}}dx$$となる。

ここで
$$\begin{align}
\displaystyle\int_{n^2}^{n^2+n}x^{-\frac{1}{2}}dx
&= \left[2x^{\frac{1}{2}}\right]_{n^2}^{n^2+n} \\
&= 2\left(\sqrt{n^2+n}-n\right) \\
&= \dfrac{2\left(\sqrt{n^2+n}-n\right)\left(\sqrt{n^2+n}+n\right)}{\sqrt{n^2+n}+n} \\
&= \dfrac{2n}{\sqrt{n^2+n}+n} \\
&= \dfrac{2}{\sqrt{1+\dfrac{1}{n}}+1} \\[1em]
\displaystyle\int_{n^2}^{n^2+n}x^{-\frac{5}{2}}dx
&= \left[-\dfrac{2}{3}x^{-\frac{3}{2}}\right]_{n^2}^{n^2+n} \\
&= -\dfrac{2}{3}\left(\dfrac{1}{\sqrt{n^2+n}^3}-\dfrac{1}{n^3}\right) \\
\end{align}$$であるから
$$\begin{array}{l}
\displaystyle\lim_{n\to\infty}\displaystyle\int_{n^2}^{n^2+n}\left(x^{-\frac{1}{2}}-\dfrac{1}{6}x^{-\frac{5}{2}}\right)dx = 1 \\
\displaystyle\lim_{n\to\infty}\displaystyle\int_{n^2}^{n^2+n}x^{-\frac{1}{2}}dx = 1
\end{array}$$となる。

したがって、はさみうちの原理により
$$\displaystyle\lim_{n\to\infty}a_n=\mathbf{1}$$

答え

$$\mathbf{1}$$

解説

⑴は、微分の基本的な問題です。
$\sin x$ のマクローリン展開が背景にあります。

⑵は、あまり見かけない被積分関数ですが、$\sin$ が入っていることから⑴の不等式を使ってはさみうちの原理を適用するんだろうな、と推測できます。

計算ミスや分子の有理化などに注意して解き進めましょう。

まとめ

今回は、神戸大学理系数学(2022年後期 第3問)の解説をしました。

ゆーきち
ゆーきち
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!