今回は、神戸大学理系数学(2020年 第4問)の解説をしたいと思います。
問題
$n$ を自然数とし,$2n\pi\leqq x\leqq(2n+1)\pi$ に対して $f(x)=\dfrac{\sin x}{x}$ とする.以下の問に答えよ.
⑴ $f(x)$ が最大となる $x$ の値がただ $1$ つ存在することを示せ.
⑵ ⑴の $x$ の値を $x_n$ とする.このとき,$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{n}{\tan x_n}$ を求めよ.
(神戸大学)
解答
⑴
$$f'(x) = \dfrac{x\cos x-\sin x}{x^2}$$であり、$x=\left(2n+\dfrac{1}{2}\right)\pi$ のとき
$$f’\left(\left(2n+\dfrac{1}{2}\right)\pi\right)=-\dfrac{1}{\left\{\left(2n+\dfrac{1}{2}\right)\pi\right\}^2}\lt 0$$となる。
$x\ne\left(2n+\dfrac{1}{2}\right)\pi$ のとき、$g(x)=x-\tan x$ とおくと
$$f'(x)=\dfrac{g(x)\cos x}{x^2}$$となる。
$2n\pi\lt x\lt(2n+1)\pi$ において
$$g'(x)=1-\dfrac{1}{\cos^2 x}=\dfrac{\cos^2 x-1}{\cos^2 x}\lt 0$$より、$g(x)$ は単調減少であり、
$$\begin{align}
g(2n\pi) &= 2n\pi\gt 0, \\[0.3em]
\displaystyle\lim_{x\to(2n+\frac{1}{2})\pi-0}g(x) &= -\infty\lt 0, \\[0.3em]
\displaystyle\lim_{x\to(2n+\frac{1}{2})\pi+0}g(x) &= \infty\gt 0, \\[0.3em]
g((2n+1)\pi) &= (2n+1)\pi\gt 0
\end{align}$$であるから、$g(\alpha)=0$ をみたす実数 $\alpha$ が $2n\pi\lt x\lt\left(2n+\dfrac{1}{2}\right)\pi$ の範囲にただ $1$ つ存在する。
よって、$\cos x$ の符号に注意すると、$f(x)$ の増減表は次のようになる。
$$\begin{array}{c||c|c|c|c|c|c|c}\hline
x & 2n\pi & \cdots & \alpha & \cdots & \left(2n+\dfrac{1}{2}\right)\pi & \cdots & (2n+1)\pi \\ \hline
f'(x) & & + & 0 & – & & – & \\ \hline
f(x) & 0 & \nearrow & \text{最大} & \searrow & & \searrow & 0 \\ \hline
\end{array}$$
したがって、$f(x)$ が最大となる $x$ の値が $x=\alpha$ としてただ $1$ つ存在する。$$\tag{証明終}$$
⑵
$\alpha=x_n$ であり、$g(x_n)=0$ より
$$\begin{align}
x_n-\tan x_n &= 0 \\[0.3em]
\therefore \ x_n &= \tan x_n
\end{align}$$となる。
⑴より、$x_n$ は $2n\pi\lt x_n\lt\left(2n+\dfrac{1}{2}\right)\pi$ をみたすので、これを変形すると
$$\dfrac{x_n}{2\pi}-\dfrac{1}{4}\lt n\lt\dfrac{x_n}{2\pi} \quad\cdots\text{①}$$となる。
$x_n\ne 0$ より、①の各辺を $x_n$( $=\tan x_n$ )で除すと
$$\dfrac{1}{2\pi}-\dfrac{1}{4x_n}\lt \dfrac{n}{\tan x_n}\lt\dfrac{1}{2\pi} \quad\cdots\text{②}$$となる。
ここで、$2n\pi\lt x_n$ より
$$\displaystyle\lim_{n\to\infty}x_n=\infty$$となる。
したがって
$$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\left(\dfrac{1}{2\pi}-\dfrac{1}{4x_n}\right)=\dfrac{1}{2\pi}$$となるので、②にはさみうちの原理を適用すると
$$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\dfrac{n}{\tan x_n}=\boldsymbol{\dfrac{1}{2\pi}}$$
$$\boldsymbol{\dfrac{1}{2\pi}}$$
解説
⑴は、よく分からない関数の最大に関する議論なので、微分しましょう。
微分した後は、導関数がいつ $0$ になるのかが重要ですが、その導関数もよく分からないときは、再度微分したり、本解答のように因数分解したりして考えましょう。
⑵は、$x_n$ が満たすべき等式・不等式を駆使して、$\dfrac{n}{\tan x_n}$ がどの範囲の値なのか考えましょう。
よくわからない関数の極限には、はさみうちの原理が有効な場合が多いです。
まとめ
今回は、神戸大学理系数学(2020年 第4問)の解説をしました。
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