今回は、一橋大学数学(2020年 第5問)の解説をしたいと思います。
問題
$n$ を正の整数とする。$1$ 枚の硬貨を投げ,表が出れば $1$ 点,裏が出れば $2$ 点を得る。この試行を繰り返し,点の合計が $n$ 以上になったらやめる。点の合計がちょうど $n$ になる確率を $p_n$ で表す。
⑴ $p_1$,$p_2$,$p_3$,$p_4$ を求めよ。
⑵ $|\,p_{n+1}-p_n\,|\lt0.01$ を満たす最小の $n$ を求めよ。
(一橋大学)
解答
⑴
$p_1$ は硬貨を $1$ 回投げて表が出る確率なので
$$p_1=\boldsymbol{\dfrac{1}{2}}.$$
$p_2$ は硬貨を $1$ 回投げて裏、もしくは $2$ 回投げて表表が出る確率なので
$$p_2=\dfrac{1}{2}+\left(\dfrac{1}{2}\right)^2=\boldsymbol{\dfrac{3}{4}}.$$
$p_3$ は硬貨を $2$ 回投げて表裏(順序を問わない)、もしくは $3$ 回投げて表表表が出る確率なので
$$p_3={}_2\mathrm{C}_1\cdot\left(\dfrac{1}{2}\right)^2+\left(\dfrac{1}{2}\right)^3=\boldsymbol{\dfrac{5}{8}}.$$
$p_4$ は硬貨を $2$ 回投げて裏裏、$3$ 回投げて表表裏(順序を問わない)、$4$ 回投げて表表表表のいずれかとなる確率なので
$$\begin{align}
p_4 &= \left(\dfrac{1}{2}\right)^2+{}_3\mathrm{C}_1\cdot\left(\dfrac{1}{2}\right)^3+\left(\dfrac{1}{2}\right)^4 \\[0.2em]
&= \boldsymbol{\dfrac{11}{16}}.
\end{align}$$
$$p_1=\boldsymbol{\dfrac{1}{2}}, \ \ p_2=\boldsymbol{\dfrac{3}{4}}, \ \ p_3=\boldsymbol{\dfrac{5}{8}}, \ \ p_4=\boldsymbol{\dfrac{11}{16}}$$
⑵
点の合計がちょうど $n+2$ になるのは、「$\,1$ 回目に表が出て、$2$ 回目以降の点の合計が $n+1$ となるとき」もしくは「$\,1$ 回目に裏が出て、$2$ 回目以降の点の合計が $n$ となるとき」なので
$$p_{n+2}=\dfrac{1}{2}p_{n+1}+\dfrac{1}{2}p_n$$が成り立つ。
この漸化式を変形すると
$$p_{n+2}-p_{n+1}=\left(-\dfrac{1}{2}\right)(p_{n+1}-p_n)$$となるので(補足1)
$$\begin{align}
p_{n+1}-p_n &= \left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}(p_2-p_1) \\
&= \left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}\cdot\left(\dfrac{3}{4}-\dfrac{1}{2}\right) \\
&= \left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}\cdot\dfrac{1}{4} \\
&= \left(-\dfrac{1}{2}\right)^{n+1}.
\end{align}$$
したがって
$$\begin{alignat}{2}
&& \ |\,p_{n+1}-p_n\,| &\lt 0.01 \\
&\Longleftrightarrow& \quad \left(\dfrac{1}{2}\right)^{n+1} &\lt \dfrac{1}{100} \\[0.2em]
&\Longleftrightarrow& \quad 100 &\lt 2^{n+1} \\[0.2em]
&\Longleftrightarrow& \quad 50 &\lt 2^n
\end{alignat}$$であり、$2^5=32$,$2^6=64$ より、求める $n$ の値は $\mathbf{6}$ である。
$$\mathbf{6}$$
解説
⑴は、硬貨を投げる回数と点数の合計に着目して解きます。表と裏が順不同であることを忘れずに計算しましょう。
⑵は、$1$ 回目の表・裏に着目して漸化式を立てます。具体的に $p_n$ を求めることもできますが、$p_{n+1}-p_n$ に関する漸化式に変形できるので、これを使いましょう。
補足
〔1〕
$$p_{n+2}=\dfrac{1}{2}p_{n+1}+\dfrac{1}{2}p_n$$の特性方程式は
$$x^2=\dfrac{1}{2}x+\dfrac{1}{2}$$であり、この解の $1$ つとして $x=-\dfrac{1}{2}$ があります。
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まとめ
今回は、一橋大学数学(2020年 第5問)の解説をしました。
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