今回は、京都大学理系数学(2019年 第1問)の解説をしたいと思います。
問題
次の各問に答えよ。
問1 $0\lt\theta\lt\dfrac{\pi}{2}$ とする。$\cos\theta$ は有理数ではないが,$\cos2\theta$ と $\cos3\theta$ がともに有理数となるような $\theta$ の値を求めよ。ただし,$p$ が素数のとき,$\sqrt{p}$ が有理数でないことは証明なしに用いてよい。
問2 次の定積分の値を求めよ。
(京都大学)
⑴ $\displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\dfrac{x}{\cos^2x}dx$ ⑵ $\displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\dfrac{dx}{\cos x}$
解答
問1
$$\begin{align}
\cos3\theta &= 4\cos^3\theta-3\cos\theta \\
&= \cos\theta(4\cos^2\theta-3) \\
&= \cos\theta\{2(2\cos^2-1)-1\} \\[0.2em]
&= \cos\theta(2\cos2\theta-1)
\end{align}$$
$2\cos2\theta-1\ne0$ とすると
$$\cos\theta=\dfrac{\cos3\theta}{2\cos2\theta-1}\quad\cdots\text{①}$$となり、$\cos2\theta$ と $\cos3\theta$ がともに有理数であることから①の右辺は有理数となるが、$\cos\theta$ が有理数でないことに矛盾する。
したがって $2\cos2\theta-1=0$ である。
$0\lt2\theta\lt\pi$ より
$$\begin{align}
\cos2\theta &= \dfrac{1}{2} \\[0.2em]
2\theta &= \dfrac{\pi}{3} \\[0.2em]
\theta &= \boldsymbol{\dfrac{\pi}{6}}
\end{align}$$
このとき、$3$ が素数なので $\sqrt{3}$ は有理数でないから $\cos\theta=\dfrac{\sqrt{3}}{2}$ は有理数でない。また $\cos2\theta=\dfrac{1}{2}$ と $\cos3\theta=0$ はともに有理数となる。
$$\boldsymbol{\dfrac{\pi}{6}}$$
問2
⑴
$$\begin{eqnarray}
&& \displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\dfrac{x}{\cos^2x}dx \\
&=& \displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}x(\tan x)’dx \\
&=& \Big[x\tan x\Big]_{0}^{\frac{\pi}{4}}-\displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\tan x\,dx \\
&=& \dfrac{\pi}{4}+\Big[\log|\cos x|\Big]_{0}^{\frac{\pi}{4}} \\
&=& \dfrac{\pi}{4}+\log\dfrac{1}{\sqrt{2}} \\
&=& \boldsymbol{\dfrac{\pi}{4}-\dfrac{1}{2}\log2}
\end{eqnarray}$$
$$\boldsymbol{\dfrac{\pi}{4}-\dfrac{1}{2}\log2}$$
⑵
$$\begin{eqnarray}
&& \displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\dfrac{dx}{\cos x} \\
&=& \displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\dfrac{\cos x}{\cos^2x}dx \\
&=& \displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\dfrac{\cos x}{(1+\sin x)(1-\sin x)}dx \\
&=& \displaystyle\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}\dfrac{1}{2}\left(\dfrac{\cos x}{1+\sin x}+\dfrac{\cos x}{1-\sin x}\right)dx \\
&=& \dfrac{1}{2}\Big[\log|1+\sin x|-\log|1-\sin x|\Big]_{0}^{\frac{\pi}{4}} \\
&=& \dfrac{1}{2}\log\dfrac{1+\dfrac{1}{\sqrt{2}}}{1-\dfrac{1}{\sqrt{2}}} \\
&=& \dfrac{1}{2}\log(\sqrt{2}+1)^2 \\
&=& \boldsymbol{\log(\sqrt{2}+1)}
\end{eqnarray}$$
$$\boldsymbol{\log(\sqrt{2}+1)}$$
解説
問1は、$\cos\theta$ に関する情報が「無理数」しかないので、$\cos\theta$ から議論を展開するのは難しそうです。
そこで、$\cos2\theta$ と $\cos3\theta$ がともに有理数であるという条件から話を進めます。
することといえば $\dfrac{q}{p}$ とおくか、加法定理を用いて式展開するかですが、後者を選択すると、$(\text{有理数})=(\text{無理数})\times(\text{有理数})$ という式が出てきます。
これは一見矛盾した式ですが、右辺の有理数が $0$ のときにのみ成り立ち、そこから $\theta$ の必要条件が求まります。
こうして求めた $\theta=\dfrac{\pi}{6}$ は必要条件を満たしたに過ぎないので、本当に問題文の条件を満たすかチェックして、必要十分であることを確かめましょう。
問2は、部分積分や部分分数分解など、定積分の計算で頻出の操作をミスなく行えるかが問われています。
まとめ
今回は、京都大学理系数学(2019年 第1問)の解説をしました。
ほかの問題にもチャレンジしよう!
京都大学 理系数学 2019年 第1問 解説
京都大学 理系数学 2019年 第2問 解説
京都大学 理系数学 2019年 第3問 解説
京都大学 理系数学 2019年 第4問 解説
京都大学 理系数学 2019年 第5問 解説
京都大学 理系数学 2019年 第6問 解説