今回は、東京大学理系数学(2020年 第3問)の解説をしたいと思います。
問題
$-1\leqq t\leqq 1$ を満たす実数 $t$ に対して,
$$\begin{align}
x(t) &= (1+t)\sqrt{1+t} \\
y(t) &= 3(1+t)\sqrt{1-t}
\end{align}$$とする。座標平面上の点 $\mathrm{P}(x(t), \ y(t))$ を考える。⑴ $-1\lt t\leqq 1$ における $t$ の関数 $\dfrac{y(t)}{x(t)}$ は単調に減少することを示せ。
⑵ 原点と $\mathrm{P}$ の距離を $f(t)$ とする。$-1\leqq t\leqq 1$ における $t$ の関数 $f(t)$ の増減を調べ,最大値を求めよ。
⑶ $t$ が $-1\leqq t\leqq 1$ を動くときの $\mathrm{P}$ の軌跡を $C$ とし,$C$ と $x$ 軸で囲まれた領域を $D$ とする。原点を中心として $D$ を時計回りに $90^{\circ}$ 回転させるとき,$D$ が通過する領域の面積を求めよ。
(東京大学)
解答
⑴
$$\begin{align}
\dfrac{y(t)}{x(t)} &= \dfrac{3(1+t)\sqrt{1-t}}{(1+t)\sqrt{1+t}} \\
&= 3\sqrt{\dfrac{1-t}{1+t}} \\
&= 3\sqrt{\dfrac{2}{1+t}-1}
\end{align}$$より、$-1\lt t\leqq 1$ において $\dfrac{y(t)}{x(t)}$ は単調に減少する。$$\tag{証明終}$$
⑵
$$\begin{align}
f(t) &= \sqrt{\{x(t)\}^2+\{y(t)\}^2} \\
&= \sqrt{\{(1+t)\sqrt{1+t}\}^2+\{3(1+t)\sqrt{1-t}\}^2} \\
&= (1+t)\sqrt{10-8t}
\end{align}$$より
$$\begin{align}
f'(t) &= \sqrt{10-8t} + (1+t)\cdot\dfrac{-8}{2\sqrt{10-8t}} \\
&= \dfrac{6-12t}{\sqrt{10-8t}}
\end{align}$$であるから、$f(t)$ の増減表は次のようになる。
$$\begin{array}{c||c|c|c|c|c}\hline
t & -1 & \cdots & \dfrac{1}{2} & \cdots & 1 \\ \hline
f'(t) & & + & 0 & – & \\ \hline
f(t) & 0 & \nearrow & \dfrac{3\sqrt{6}}{2} & \searrow & 2\sqrt{2} \\ \hline
\end{array}$$
よって、$f(t)$ は $t=\dfrac{1}{2}$ で最大値 $\boldsymbol{\dfrac{3\sqrt{6}}{2}}$ をとる。
$$\boldsymbol{\dfrac{3\sqrt{6}}{2}}$$
⑶
$-1\leqq t \leqq 1$ において $x(t)=(1+t)^{\frac{3}{2}}$ は単調増加する。
また $-1\lt t \lt 1$ において
$$\begin{align}
\dfrac{dy}{dt} &= 3\sqrt{1-t}+3(1+t)\dfrac{-1}{2\sqrt{1-t}} \\
&= \dfrac{3(1-3t)}{2\sqrt{1-t}}
\end{align}$$より、$x(t), \ y(t)$ の増減表は次のようになる。
$$\begin{array}{c||c|c|c|c|c}\hline
t & -1 & \cdots & \dfrac{1}{3} & \cdots & 1 \\ \hline
\dfrac{dx}{dt} & & + & & + & \\ \hline
\dfrac{dy}{dt} & & + & 0 & – & \\ \hline
x(t) & 0 & \nearrow & \dfrac{8\sqrt{3}}{9} & \nearrow & 2\sqrt{2} \\ \hline
y(t) & 0 & \nearrow & \dfrac{4\sqrt{6}}{3} & \searrow & 0 \\ \hline
\end{array}$$
さらに⑴より、原点を $\mathrm{O}$ とすると、直線 $\mathrm{OP}$ の傾きは単調に減少するので、$C,D$ の概形は図のようになる。
$D$ が通過する領域は図の網掛け部分(境界を含む)である。
ここで、$t=\dfrac{1}{2}$ における点 $\mathrm{P}$ の位置を $\mathrm{Q}$ とし、点 $\mathrm{Q}$ および曲線 $C$ を原点を中心として時計回りに $90^{\circ}$ 回転したものをそれぞれ $\mathrm{Q}’,C’$ とする。
このとき、線分 $\mathrm{OQ}, \ \mathrm{OQ}’$ と円 $x^2+y^2=\dfrac{27}{2}$ で囲まれた領域の面積を $S_1$ とすると、$S_1$ は半径 $\dfrac{3\sqrt{6}}{2}$ の円の $\dfrac{1}{4}$ の面積に等しく
$$S_1 = \dfrac{1}{4}\cdot\pi\cdot \dfrac{27}{2} = \dfrac{27}{8}\pi$$
また、線分 $\mathrm{OQ}$ と曲線 $C$ で囲まれた領域の面積を $S_2$、線分 $\mathrm{OQ}’$ と曲線 $C’$ および $y$ 軸で囲まれた領域の面積を $S_3$ とすると、$S_2+S_3$ は領域 $D$ の面積に等しく
$$\begin{align}
S_2+S_3 &= \displaystyle\int_{0}^{2\sqrt{2}} y \ dx = \displaystyle\int_{-1}^{1} y(t)\dfrac{dx(t)}{dt}dt \\
&= \displaystyle\int_{-1}^{1} 3(1+t)\sqrt{1-t}\cdot\dfrac{3}{2}\sqrt{1+t}dt \\
&= \dfrac{9}{2}\displaystyle\int_{-1}^{1}\left\{ \sqrt{1-t^2}dt + t\sqrt{1-t^2} \right\}dt
\end{align}$$
ここで、$\displaystyle\int_{-1}^{1} \sqrt{1-t^2}dt$ は半径 $1$ の円の $\dfrac{1}{2}$ の面積に等しく
$$\displaystyle\int_{-1}^{1} \sqrt{1-t^2}dt = \dfrac{1}{2}\pi$$
また、$(-t)\sqrt{1-(-t)^2} = -t\sqrt{1-t^2}$ より、$t\sqrt{1-t^2}$ は奇関数なので
$$\displaystyle\int_{-1}^{1} t\sqrt{1-t^2}dt = 0$$
よって
$$S_2+S_3=\dfrac{9}{2}\cdot\left( \dfrac{1}{2}\pi+0 \right) = \dfrac{9}{4}\pi$$
したがって、$D$ が通過する領域の面積は
$$S_1+S_2+S_3 = \dfrac{27}{8}\pi + \dfrac{9}{4}\pi = \boldsymbol{\dfrac{45}{8}\pi}$$
$$\boldsymbol{\dfrac{45}{8}\pi}$$
解説
この問題は、$D$ が通過する領域の面積が $S_1,S_2,S_3$ の $3$ つに分けられることに気付けるかどうかがポイントでした。さらに $S_1$ が中心角 $90^\circ$ の扇形であり、$S_2+S_3$ が領域 $D$ そのものの面積に等しいことがイメージできれば、あとは計算だけです。
回転する領域の面積を求めるにあたって、中心からの距離の増減・最大値が必要なことは明らかなので⑵を使うことは分かりますが、⑴がどこに活かされているか分かりましたか?
実は、⑴の事実があることで、$C$ が「膨らんでいる」状態を表すことができます。$C$ が線分 $\mathrm{OQ}$ にめり込む(横切る)ような曲線だったとすると、$D$ の通過領域面積は $S_1+S_2+S_3$ と表せなくなってしまいます。
このことから⑴が必要だったのです。
また先ほど「あとは計算」と言いましたが、積分の計算で奇関数を見抜くなど、計算時間と計算ミスを減らせるポイントがあるので、ぜひ気付けるように注意しましょう。
まとめ
今回は、東京大学理系数学(2020年 第3問)の解説をしました。
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