今回は、東京大学理系数学(2020年 第5問)の解説をしたいと思います。
問題
座標空間において,$xy$ 平面上の原点を中心とする半径 $1$ の円を考える。この円を底面とし,点 $(0,0,2)$ を原点とする円錐(内部を含む)を $S$ とする。また,点 $\mathrm{A}(1,0,2)$ を考える。
⑴ 点 $\mathrm{P}$ が $S$ の底面を動くとき,線分 $\mathrm{AP}$ が通過する部分を $T$ とする。平面 $z=1$ による $S$ の切り口および,平面 $z=1$ による $T$ の切り口を同一平面上に図示せよ。
⑵ 点 $\mathrm{P}$ が $S$ を動くとき,線分 $\mathrm{AP}$ が通過する部分の体積を求めよ。
(東京大学)
解答
⑴
原点を $\mathrm{O}$ とし、$(0,0,2)$ の点を $\mathrm{B}$ とする。
点 $\mathrm{P}$ が $S$ の底面の原点を除く範囲を動くとき、$\mathrm{P}$ の座標は $0\leqq r\leqq 1, \ $$0\leqq\theta\leqq 2\pi$ を満たす実数 $r,\theta$ を用いて $(r\cos\theta, \ r\sin\theta , \ 0)$ と表せる。
ここで、線分 $\mathrm{BP}$ 上の点を $\mathrm{Q}$ とすると、$0\leqq s\leqq 1$ を満たす実数 $s$ を用いて
$$\begin{align}
\overrightarrow{\mathrm{OQ}} &= \overrightarrow{\mathrm{OB}} +s\overrightarrow{\mathrm{BQ}} \\
&=
\begin{pmatrix}
0 \\ 0 \\ 2
\end{pmatrix}
+s
\begin{pmatrix}
r\cos\theta \\ r\sin\theta \\ -2
\end{pmatrix}\quad\cdots\text{①}
\end{align}$$と表せる。$\mathrm{Q}$ が平面 $z=1$ 上の点となるのは $2-2s=1$ すなわち $s=\dfrac{1}{2}$ のときであり、このとき
$$\overrightarrow{\mathrm{OQ}} =
\begin{pmatrix}
0 \\ 0 \\ 1
\end{pmatrix}
+\dfrac{r}{2}
\begin{pmatrix}
\cos\theta \\ \sin\theta \\ 0
\end{pmatrix}$$となるので、点 $\mathrm{Q}$ は平面 $z=1$ 上で点 $(0,0,1)$ を中心とする半径 $\dfrac{1}{2}$ の円の周および内部を動き、これが平面 $z=1$ による $S$ の切り口 $S’$ である。
また、線分 $\mathrm{AP}$ 上の点を $\mathrm{R}$ とすると、$0\leqq t\leqq 1$ を満たす実数 $t$ を用いて
$$\begin{align}
\overrightarrow{\mathrm{OR}} &= \overrightarrow{\mathrm{OA}} +t\overrightarrow{\mathrm{AR}} \\
&=
\begin{pmatrix}
1 \\ 0 \\ 2
\end{pmatrix}
+t
\begin{pmatrix}
r\cos\theta-1 \\ r\sin\theta \\ -2
\end{pmatrix}
\end{align}$$と表せる。$\mathrm{R}$ が平面 $z=1$ 上の点となるのは $2-2t=1$ すなわち $t=\dfrac{1}{2}$ のときであり、このとき
$$\overrightarrow{\mathrm{OR}} =
\begin{pmatrix}
\dfrac{1}{2} \\ 0 \\ 1
\end{pmatrix}
+\dfrac{r}{2}
\begin{pmatrix}
\cos\theta \\ \sin\theta \\ 0
\end{pmatrix}$$となるので、点 $\mathrm{R}$ は平面 $z=1$ 上で点 $\left(\dfrac{1}{2}, \ 0, \ 1\right)$ を中心とする半径 $\dfrac{1}{2}$ の円の周および内部を動き、これが平面 $z=1$ による $T$ の切り口 $T’$ である。
したがって、$(0,0,1)$ の点を $\mathrm{O}’$ とすると、$S’,T’$ は下図の網掛け部分となる。ただし、境界を含む。
下図の網掛け部分(境界を含む)
⑵
点 $\mathrm{P}$ が $S$ を動くとき、線分 $\mathrm{AP}$ が通過する部分を $W$ とおく。
平面 $z=k$( $0\leqq k \lt 2$ )による $S$ の切り口 $S_k$ について考える。
線分 $\mathrm{BP}$ 上の点 $\mathrm{Q}$ が平面 $z=k$ 上の点となるのは、①より $2-2s=k$ すなわち $s=\dfrac{2-k}{2}$ のときであり、このとき
$$\overrightarrow{\mathrm{OQ}} =
\begin{pmatrix}
0 \\ 0 \\ k
\end{pmatrix}
+\dfrac{2-k}{2}r
\begin{pmatrix}
\cos\theta \\ \sin\theta \\ 0
\end{pmatrix}$$となるので、点 $\mathrm{Q}$ は平面 $z=k$ 上で点 $(0,0,k)$ を中心とする半径 $\dfrac{2-k}{2}$ の円の周および内部を動き、これが $S_k$ である。
すなわち、$S_k$ 上の点 $\mathrm{P}$ の座標は $0\leqq r’\leqq \dfrac{2-k}{2}, \ $$0\leqq\theta’\leqq 2\pi$ を満たす実数 $r’,\theta’$ を用いて $(r’\cos\theta’, \ r’\sin\theta’ , \ k)$ と表せる。
点 $\mathrm{P}$ が $S_k$ を動くとき、線分 $\mathrm{AP}$ が通過する部分の平面 $z=\ell$( $k\leqq \ell \leqq 2$ )による切り口 $U_\ell$ について考える。
線分 $\mathrm{AP}$ 上の点を $\mathrm{R}’$ とすると、$0\leqq u\leqq 1$ を満たす実数 $u$ を用いて
$$\begin{align}
\overrightarrow{\mathrm{OR}’} &= \overrightarrow{\mathrm{OA}} +u\overrightarrow{\mathrm{AR}’} \\
&=
\begin{pmatrix}
1 \\ 0 \\ 2
\end{pmatrix}
+u
\begin{pmatrix}
r’\cos\theta’-1 \\ r’\sin\theta’ \\ k-2
\end{pmatrix}
\end{align}$$と表せる。$\mathrm{R}’$ が平面 $z=\ell$ 上の点となるのは $2+u(k-2)=\ell$ すなわち $u=\dfrac{2-\ell}{2-k}$ のときであり、このとき
$$\overrightarrow{\mathrm{OR}’} =
\begin{pmatrix}
\dfrac{\ell-k}{2-k} \\ 0 \\ \ell
\end{pmatrix}
+\dfrac{2-\ell}{2-k}r’
\begin{pmatrix}
\cos\theta’ \\ \sin\theta’ \\ 0
\end{pmatrix}$$となる。
$0\leqq r’\leqq \dfrac{2-k}{2}$ より $0\leqq \dfrac{2-\ell}{2-k}r’ \leqq \dfrac{2-\ell}{2}$ なので、点 $\mathrm{R}’$ は平面 $z=\ell$ 上で点 $\left(\dfrac{\ell-k}{2-k}, \ 0, \ \ell\right)$ を中心とする半径 $\dfrac{2-\ell}{2}$ の円の周および内部を動き、これが $U_\ell$ である。
$k$ が $0\leqq k \leqq \ell$ の範囲を動くとき、$U_\ell$ の中心の $x$ 座標は $0\leqq \dfrac{\ell-k}{2-k} \leqq \dfrac{\ell}{2}$ の範囲を動く。また $y$ 座標、$z$ 座標についてはそれぞれ $0,\ell$ で一定であり、半径も $\dfrac{2-\ell}{2}$ で一定である。
したがって、$(0,0,\ell)$ の点を $\mathrm{O}_\ell$ とすると、$0\leqq k \leqq \ell$ において点 $\mathrm{P}$ が $S_k$ を動くとき、$U_\ell$ は下図の網掛け部分を動く。
これが平面 $z=\ell$ による $W$ の切り口であり、その面積 $f(\ell)$ は、長方形と円の面積を足せばよいので
$$\begin{align}
f(\ell) &= 2 \cdot \dfrac{2-\ell}{2} \cdot \dfrac{\ell}{2} + \pi\left( \dfrac{2-\ell}{2} \right)^2 \\
&= \dfrac{\ell(2-\ell)}{2} + \dfrac{\pi(2-\ell)^2}{4} \ \text{(} \ 0\leqq\ell\leqq 2 \ \text{)}
\end{align}$$
したがって、求める体積 $V$ は
$$\begin{align}
V &= \displaystyle\int_{0}^{2}f(\ell)d\ell \\
&= \displaystyle\int_{0}^{2} \left\{ \dfrac{\ell(2-\ell)}{2} + \dfrac{\pi(2-\ell)^2}{4} \right\} d\ell \\
&= \dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{(2-0)^3}{6}+\dfrac{\pi}{4}\left[ -\dfrac{(2-\ell)^3}{3} \right]_0^2 \\
&= \boldsymbol{ \dfrac{2}{3} + \dfrac{2}{3}\pi }
\end{align}$$
$$\boldsymbol{ \dfrac{2}{3} + \dfrac{2}{3}\pi }$$
解説
⑴は答えだけ求めればよいなら簡単ですが、過程を記述しなければならないので面倒です。
解答のようにベクトルで処理するか、三角形の相似に着目するのがベターです。
図示問題なので、図さえ合っていれば記述はほどほどで大丈夫です。
⑵は、まず「 $S$ を動く」を「 $S$ の底面を動く」と誤読しないよう注意しましょう。
また、よく分からない立体の体積を求めるときは、ある平面で切って断面積を求めて積分するという流れが定番です。
今回の問題では、その「ある平面で切った断面」が別の変数(解答では $k$ )が動くことでややこしくなっています。
「平面 $z=\ell$ で切った断面」を求めるために、平面 $z=\ell$ より下側の $S$ を点 $\mathrm{P}$ が動くときの「線分 $\mathrm{AP}$ と平面 $z=\ell$ の交点」が動く範囲を考えなければならない、という流れです。
まとめ
今回は、東京大学理系数学(2020年 第5問)の解説をしました。
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