今回は、東京大学理系数学(2019年 第3問)の解説をしたいと思います。
問題
座標空間内に $5$ 点 $\mathrm{A}(2,\,0,\,0), \ $$\mathrm{B}(0,\,2,\,0), \ $$\mathrm{C}(-2,\,0,\,0), \ $$\mathrm{D}(0,\,-2,\,0), \ $$\mathrm{E}(0,\,0,\,-2)$ を考える。線分 $\mathrm{AB}$ の中点 $\mathrm{M}$ と線分 $\mathrm{AD}$ の中点 $\mathrm{N}$ を通り,直線 $\mathrm{AE}$ に平行な平面を $\alpha$ とする。さらに,$p$ は $2\lt p\lt4$ をみたす実数とし,点 $\mathrm{P}(p,\,0,\,2)$ を考える。
⑴ 八面体 $\mathrm{PABCDE}$ の平面 $y=0$ による切り口および,平面 $\alpha$ の平面 $y=0$ による切り口を同一平面上に図示せよ。
⑵ 八面体 $\mathrm{PABCDE}$ の平面 $\alpha$ による切り口が八角形となる $p$ の範囲を求めよ。
⑶ 実数 $p$ が⑵で定まる範囲にあるとする。八面体 $\mathrm{PABCDE}$ の平面 $\alpha$ による切り口のうち $y\geqq0$,$z\geqq0$ の部分を点 $(x,\,y,\,z)$ が動くとき,座標平面上で点 $(y,z)$ が動く範囲の面積を求めよ。
(東京大学)
解答
⑴
平面 $y=0$ による八面体 $\mathrm{PABCDE}$ と平面 $\alpha$ の切り口をそれぞれ $S,\,$$T$ とする。
$S$ は四角形 $\mathrm{PAEC}$ となる。
$T$ について考える。
$\mathrm{M}(1,\,1,\,0)$,$\mathrm{N}(1,\,-1,\,0)$ より、直線 $\mathrm{MN}$ と平面 $y=0$ の交点を $\mathrm{F}$ とすると、$\mathrm{F}(1,\,0,\,0)$ である。
直線 $\mathrm{AE}$ の式は
$$y=0,\quad z=x-2$$なので、$T$ は点 $\mathrm{F}$ を通り直線 $\mathrm{AE}$ に平行な直線、すなわち
$$y=0,\quad z=x-1 \quad\cdots\text{①}$$となる。
点 $\mathrm{P}$ が $T$ 上にあるとき
$$2=p-1 \ \Longleftrightarrow \ p=3.$$
したがって、$S,\,T$ を図示すると下図のようになる。
$2\lt p\lt 3$ のとき
$p=3$ のとき
$3\lt p\lt 4$ のとき
$2\lt p\lt 3$ のとき
$p=3$ のとき
$3\lt p\lt 4$ のとき
⑵
⑴より、$2\lt p\leqq3$ のとき、平面 $\alpha$ は八面体 $\mathrm{PABCDE}$ の辺 $\mathrm{AB}, \ $$\mathrm{AP}, \ $$\mathrm{AD}, \ $$\mathrm{ED}, \ $$\mathrm{EC}, \ $$\mathrm{EB}$ と交わるので、題意の切り口は六角形となる(下図参照)。

また、$3\lt p\lt4$ のとき、平面 $\alpha$ は八面体 $\mathrm{PABCDE}$ の辺 $\mathrm{AB}, \ $$\mathrm{PB}, \ $$\mathrm{PA}, \ $$\mathrm{PD}, \ $$\mathrm{AD}, \ $$\mathrm{ED}, \ $$\mathrm{EC}, \ $$\mathrm{EB}$ と交わるので、題意の切り口は八角形となる(下図参照)。

したがって、求める $p$ の範囲は
$$\boldsymbol{3\lt p\lt4}.$$
$$\boldsymbol{3\lt p\lt4}$$
⑶
$3\lt p\lt4$ のとき、$y\geqq0$,$z\geqq0$ における図は以下のようになる。

平面 $\alpha$ と辺 $\mathrm{AB}$ の交点は $\mathrm{M}(1,\,1,\,0)$ であり、平面 $\alpha$ と辺 $\mathrm{AC}$ の交点は $\mathrm{F}(1,\,0,\,0)$ である。
次に、平面 $\alpha$ と辺 $\mathrm{CP}$ の交点($\,\mathrm{G}$ とする。)の座標について考える。
平面 $y=0$ 上における直線 $\mathrm{CP}$ の方程式は
$$z=\dfrac{2}{p+2}(x+2)$$であり、これと①の交点が $\mathrm{G}$ なので、$\mathrm{G}$ の $x$ 座標は
$$\begin{align}
\dfrac{2}{p+2}(x+2) &= x-1 \\
2(x+2) &= (p+2)(x-1) \\[0.2em]
px &= p+6 \\[0.2em]
\therefore \ x &= \dfrac{p+6}{p}. \ \text{(}\because p\ne0\,\text{)}
\end{align}$$$\mathrm{G}$ は①上の点なので、$\mathrm{G}\left(\dfrac{p+6}{p},\,0,\,\dfrac{6}{p}\right)$ となる。
さらに、平面 $\alpha$ と辺 $\mathrm{BP}$ の交点($\,\mathrm{H}$ とする。)の座標について考える。
座標空間の原点を $\mathrm{O}$ とすると、平面 $y=0$ 上における直線 $\mathrm{OP}$ の方程式は
$$z=\dfrac{2}{p}x$$であり、これと①の交点の $x$ 座標は
$$\begin{align}
\dfrac{2}{p}x &= x-1 \\
2x &= px-p \\[0.2em]
\therefore \ x &= \dfrac{p}{p-2}. \ \text{(}\because p\ne2\,\text{)}
\end{align}$$
したがって、$\mathrm{H}$ は辺 $\mathrm{BP}$ を $\dfrac{p}{p-2}:\left(p-\dfrac{p}{p-2}\right)=1:(p-3)$ に内分する点である。よって、$\mathrm{H}\left(\dfrac{p}{p-2},\,\dfrac{2(p-3)}{p-2},\,\dfrac{2}{p-2}\right)$ となる。
以上より、八面体 $\mathrm{PABCDE}$ の平面 $\alpha$ による切り口のうち $y\geqq0$,$z\geqq0$ の部分は四角形 $\mathrm{FGHM}$ の周および内部であるから、この部分を点 $(x,\,y,\,z)$ が動くとき点 $(y,z)$ が動く範囲は、$4$ 点 $(0,\,0)$,$\left(0,\,\dfrac{6}{p}\right)$,$\left(\dfrac{2(p-3)}{p-2},\,\dfrac{2}{p-2}\right)$,$(1,\,0)$ を頂点とする四角形の周および内部である。

よって、求める面積は
$$\begin{align}
&\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{6}{p}\cdot\dfrac{2(p-3)}{p-2}+\dfrac{1}{2}\cdot1\cdot\dfrac{2}{p-2} \\[0.3em]
=\,\,&\boldsymbol{\dfrac{7p-18}{p(p-2)}}.
\end{align}$$
$$\boldsymbol{\dfrac{7p-18}{p(p-2)}}$$
解説
平面による八面体の切り口を考える、高い空間把握能力を必要とする問題です。
⑴は、八面体については、平面 $y=0$ 上にある頂点が $\mathrm{P},\,$$\mathrm{A},\,$$\mathrm{E},\,$$\mathrm{C}$ なので、切り口はこれらを結んでできる四角形だと分かります。
また平面 $\alpha$ については、直線 $\mathrm{MN}$ が $y$ 軸と平行かつ直線 $\mathrm{AE}$ が $y$ 軸と垂直なので、線分 $\mathrm{MN}$ の中点(解答では $\mathrm{F}\,$)を平行移動させた軌跡だと分かります。
⑵は、答えを出すだけならそこまで難しくはないですが、きちんと記述をしようとすると案外悩みます。
八角形になることを示すには、頂点が $8$ 個できることを示せばよいので、本解答では⑴の答えの図から $3$ 次元的にイメージして、$\alpha$ がどの辺と交わるかを列挙しました。
下のアニメーションを見ると、確かに $p=3$ を境目として六角形 $\leftrightarrow$ 八角形と切り口が変化していることが分かりますね。

⑶は、題意の把握からややこしいです。要は、切り口の $y\geqq0$,$z\geqq0$ の部分を $yz$ 平面に投影するとどうなるかを問うています。
面積計算自体は簡単なので、四角形の $4$ 頂点の座標を求めるところが山場と言えるでしょう。
まとめ
今回は、東京大学理系数学(2019年 第3問)の解説をしました。
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