数学過去問解説

京都大学 理系数学 2021年 第1問 解説

ゆーきち
ゆーきち
こんにちは、ゆーきちです!

今回は、京都大学理系数学(2021年 第1問)の解説をしたいと思います。

問題

 次の各問に答えよ.

問1 $xyz$ 空間の $3$ 点 $\mathrm{A}(1,0,0), \ $$\mathrm{B}(0,-1,0), \ $$\mathrm{C}(0,0,2)$ を通る平面 $\alpha$ に関して点 $\mathrm{P}(1,1,1)$ と対称な点$\mathrm{Q}$ の座標を求めよ.ただし,点$\mathrm{Q}$ が平面 $\alpha$ に関して $\mathrm{P}$ と対称であるとは,線分 $\mathrm{PQ}$ の中点 $\mathrm{M}$ が平面 $\alpha$ 上にあり,直線 $\mathrm{PM}$ が $\mathrm{P}$ から平面 $\alpha$ に下ろした垂線となることである.

問2 赤玉,白玉,青玉,黄玉が $1$ 個ずつ入った袋がある.よくかきまぜた後に袋から玉を $1$ 個取り出し,その玉の色を記録してから袋に戻す.この試行を繰り返すとき,$n$ 回目の試行で初めて赤玉が取り出されて $4$ 種類全ての色が記録済みとなる確率を求めよ.ただし $n$ は $4$ 以上の整数とする.

(京都大学)

※ 問2の「ただし $n$ は $4$ 以上の整数とする.」は補足説明により加えられた文です。

解答

問1

$$\overrightarrow{\mathrm{AB}}=(-1,-1,0),\quad \overrightarrow{\mathrm{AC}}=(-1,0,2)$$より、平面 $\alpha$ に垂直なベクトルの $1$ つを $\overrightarrow{n}$ とすると
$$\overrightarrow{n}=(2,-2,1)$$

平面 $\alpha$ 上の任意の点 $\mathrm{R}(x,y,z)$ に対して $\overrightarrow{\mathrm{AR}} \perp \overrightarrow{n}$ が成り立つので
$$\begin{eqnarray}
\overrightarrow{\mathrm{AR}} \cdot \overrightarrow{n} &=& 0 \\
(x-1,y,z) \cdot (2,-2,1) &=& 0 \\
2(x-1)-2y+z &=& 0
\end{eqnarray}$$

よって、平面 $\alpha$ の方程式は
$$2x-2y+z=2 \quad\cdots\text{①}$$となる。

$\mathrm{P}$ から平面 $\alpha$ に下ろした垂線の足を $\mathrm{H}$ とおくと
$$\overrightarrow{\mathrm{PH}}=t \ \overrightarrow{n} \ \text{(} \ n \ \text{は実数)} \quad\cdots\text{②}$$と表せる。

$xyz$ 空間の原点を $\mathrm{O}$ とすると
$$\begin{eqnarray}
\overrightarrow{\mathrm{OH}} &=& \overrightarrow{\mathrm{OP}}+\overrightarrow{\mathrm{PH}} \\
&=& \overrightarrow{\mathrm{OP}}+t \ \overrightarrow{n} \\
&=& (1,1,1)+t(2,-2,1) \\
&=& (2t+1,-2t+1,t+1)
\end{eqnarray}$$

$\mathrm{H}$ は平面 $\alpha$ 上の点なので、①より
$$\begin{array}{c}
2(2t+1)-2(-2t+1)+(t+1) = 2 \\
\therefore\quad t = \dfrac{1}{9}
\end{array}$$

よって、②より $\overrightarrow{\mathrm{PH}}=\left( \dfrac{2}{9},-\dfrac{2}{9},\dfrac{1}{9} \right)$ となるので
$$\begin{eqnarray}
\overrightarrow{\mathrm{OQ}} &=& \overrightarrow{\mathrm{OP}}+\overrightarrow{\mathrm{PQ}} \\
&=& \overrightarrow{\mathrm{OP}} + 2\overrightarrow{\mathrm{PH}} \\
&=& (1,1,1)+2\left( \dfrac{2}{9},-\dfrac{2}{9},\dfrac{1}{9} \right) \\
&=& \left( \dfrac{13}{9},\dfrac{5}{9},\dfrac{11}{9} \right)
\end{eqnarray}$$

したがって、点$\mathrm{Q}$ の座標は
$$\boldsymbol{\left( \dfrac{13}{9},\dfrac{5}{9},\dfrac{11}{9} \right)}$$

答え

$$\boldsymbol{\left( \dfrac{13}{9},\dfrac{5}{9},\dfrac{11}{9} \right)}$$

問2

$1$ ~ $(n-1)$ 回目の試行で赤玉以外の $3$ 種類すべてが取り出され、かつ $n$ 回目に赤玉が取り出される確率を求めればよい。

ここで、$3$ つの事象 $\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C}$ を、$1$ ~ $(n-1)$ 回目の試行において
$\mathrm{A}$:赤玉以外の $1$ 種類のみを取り出す
$\mathrm{B}$:赤玉以外の $2$ 種類のみを取り出す
$\mathrm{C}$:赤玉以外の玉を取り出す
と定め、事象 $\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{C}$ が起こる確率をそれぞれ $P(\mathrm{A}),P(\mathrm{B}),P(\mathrm{C})$ とする。

事象 $\mathrm{C}$ から事象 $\mathrm{A},\mathrm{B}$ を引けば、$1$ ~ $(n-1)$ 回目の試行で赤玉以外の $3$ 種類すべてが取り出される場合の数が求められる。

事象 $\mathrm{A}$ については、色の決め方が $3$ 通りあるので
$$P(\mathrm{A})=3\cdot\left(\dfrac{1}{4}\right)^{n-1} = \dfrac{3}{4^{n-1}}$$

事象 $\mathrm{B}$ については、$1$ ~ $(n-1)$ 回目の試行において「赤玉以外の $2$ 種類以内を取り出す場合」から「赤玉以外の $2$ 種類のどちらか一方のみを取り出す場合」を引けばよい。

赤玉以外の $2$ 種類の色の決め方は ${}_3\mathrm{C}_2=3$ 通りあるので
$$\begin{eqnarray}
P(\mathrm{B}) &=& 3\cdot\bigg\{ \left(\dfrac{2}{4}\right)^{n-1}-2\cdot\left(\dfrac{1}{4}\right)^{n-1} \bigg\} \\
&=& \dfrac{3(2^{n-1}-2)}{4^{n-1}}
\end{eqnarray}$$

また
$$P(\mathrm{C})=\left(\dfrac{3}{4}\right)^{n-1} = \dfrac{3^{n-1}}{4^{n-1}}$$

したがって、求める確率は
$$\begin{eqnarray}
&& [P(\mathrm{C})-\{P(\mathrm{A})+P(\mathrm{B})\}] \cdot \dfrac{1}{4} \\
&=& \bigg[ \dfrac{3^{n-1}}{4^{n-1}}-\bigg\{ \dfrac{3}{4^{n-1}} + \dfrac{3(2^{n-1}-2)}{4^{n-1}} \bigg\} \bigg] \cdot \dfrac{1}{4} \\
&=& \boldsymbol{\dfrac{3^{n-1}-3\cdot 2^{n-1}+3}{4^n}}
\end{eqnarray}$$

答え

$$\boldsymbol{\dfrac{3^{n-1}-3\cdot 2^{n-1}+3}{4^n}}$$

解説

問1は、点 $\mathrm{P}$ から平面 $\alpha$ に下ろした垂線の足(解答では $\mathrm{H}$ )の座標を $1$ つの文字(解答では $t$ )で表すことが第 $1$ ステップです。
解答のように法線ベクトルを用いるか、$\overrightarrow{\mathrm{PH}}$ が $\overrightarrow{\mathrm{AB}}$ や $\overrightarrow{\mathrm{AC}}$ と垂直であるということを使いましょう。

ちなみに後者の方法で、 $\overrightarrow{\mathrm{BC}}$ と垂直であることも使えば式は $3$ つ出来ますが、$\overrightarrow{\mathrm{BC}}=\overrightarrow{\mathrm{AC}}-\overrightarrow{\mathrm{AB}}$ となり、これらは従属な関係ですから、意味のない式となってしまいます。

第 $2$ ステップは、設定した文字 $t$ の具体的な値を別の条件から求めることです。
解答のように平面 $\alpha$ の方程式に代入するか、$\mathrm{H}$ が平面 $\alpha$ 上の点であることから
$$\overrightarrow{\mathrm{AH}}=\beta\overrightarrow{\mathrm{AB}}+\gamma\overrightarrow{\mathrm{AC}}$$とおいてみましょう。

問2は、安直に $\dfrac{3^{n-1}}{4^n}$ としてはいけません。
この答えの場合、$1$ ~ $(n-1)$ 回目の試行で赤以外の $3$ 種類のうちどれかを取り出し続けることを考えているので、例えば「白玉のみ取り出して青玉・黄玉が記録されないまま $n$ 回目に赤玉が取り出される」という事象を排除できていません。この排除すべき事象が解答でいうところの「事象 $\mathrm{A},\mathrm{B}$ 」なのです。

また、$n$ 回目に関する確率から「確率漸化式」を想定した人もいるかもしれませんが、これも上手くいかないと思います。
例えば求める確率を $p_n$ とおいたとしても、「 $1-p_n$ 」の中にはさまざまな状況が混在しており、単純に $p_{n+1}$ と結びつける関係式をつくることができないからです。

確率の中でも混乱しやすいタイプの問題ですが、求める事象を過不足なく数え上げられているか、しっかりチェックしましょう。

まとめ

今回は、京都大学理系数学(2021年 第1問)の解説をしました。

ゆーきち
ゆーきち
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!