今回は、神戸大学理系数学(2021年後期 第1問)の解説をしたいと思います。
問題
整数を係数とする整式 $f(x)$ に関する条件「すべての整数 $n$ について $f(n)$ は $5$ の倍数となる」を $P$ とする.以下の問に答えよ.
⑴ $f(x)=x^5-5x^3+4x$ とする.$f(x)$ を因数分解せよ.また $f(x)$ は条件 $P$ をみたすことを示せ.
⑵ $f(x)=x^4+ax^3+bx^2+cx+d$( $a,b,c,d$ は整数)とする.整式 $g_1(x), \ g_2(x), \ g_3(x), \ g_4(x)$ を
$$\begin{array}{l}
g_1(x)=f(x+1)-f(x),\\
g_{i+1}(x)=g_i(x+1)-g_i(x) \quad (i=1,2,3)
\end{array}$$により定める.$g_1(x), \ g_2(x), \ g_3(x), \ g_4(x)$ を求めよ.⑶ 整数を係数とする $4$ 次式 $f(x)$ で $x^4$ の係数が $1$ であるものは条件 $P$ をみたさないことを示せ.
(神戸大学)
解答
⑴
$$\begin{eqnarray}
f(x) &=& x^5-5x^3+4x \\
&=& x\left(x^2-1\right)\left(x^2-4\right) \\
&=& \boldsymbol{x(x+1)(x-1)(x+2)(x-2)}
\end{eqnarray}$$
整数 $n$ について $n-2, \ n-1, \ n, \ n+1, \ n+2$ は連続する $5$ つの整数なので、これらのうち $1$ つだけが必ず $5$ の倍数となる。
したがって、これらの積である $f(n)$ も $5$ の倍数となり、$f(x)$ は条件 $P$ をみたす。$$\tag{証明終}$$
$$f(x)=\boldsymbol{x(x+1)(x-1)(x+2)(x-2)}$$
⑵
$$\begin{eqnarray}
g_1(x) &=& (x+1)^4+a(x+1)^3+b(x+1)^2+c(x+1)+d \\
&&-(x^4+ax^3+bx^2+cx+d) \\
&=& \boldsymbol{4x^3+(3a+6)x^2+(3a+2b+4)x+a+b+c+1} \\[1em]
g_2(x) &=& 4(x+1)^3+(3a+6)(x+1)^2+(3a+2b+4)(x+1)+a+b+c+1 \\
&&-\left\{4x^3+(3a+6)x^2+(3a+2b+4)x+a+b+c+1\right\} \\
&=& \boldsymbol{12x^2+(6a+24)x+6a+2b+14} \\[1em]
g_3(x) &=& 12(x+1)^2+(6a+24)(x+1)+6a+2b+14 \\
&&-\left\{12x^2+(6a+24)x+6a+2b+14\right\} \\
&=& \boldsymbol{24x+6a+36} \\[1em]
g_4(x) &=& 24(x+1)+6a+36-(24x+6a+36) \\
&=& \boldsymbol{24}
\end{eqnarray}$$
$$\begin{eqnarray}
g_1(x) &=& \boldsymbol{4x^3+(3a+6)x^2+(3a+2b+4)x+a+b+c+1} \ ,\\
g_2(x) &=& \boldsymbol{12x^2+(6a+24)x+6a+2b+14} \ ,\\
g_3(x) &=& \boldsymbol{24x+6a+36} \ ,\\
g_4(x) &=& \boldsymbol{24}
\end{eqnarray}$$
⑶
条件より、⑵と同様に $f(x)=x^4+ax^3+bx^2+cx+d$( $a,b,c,d$ は整数)とおけ、これが条件 $P$ をみたすと仮定すると、すべての整数 $n$ について $f(n+1), \ f(n)$ は $5$ の倍数なので、$g_1(n)$($=f(n+1)-f(n)$)も $5$ の倍数となる。
よって、$g_1(x)$ は条件 $P$ をみたす。$\cdots\text{①}$
ここで、$g_i(x)$( $i=1,2,3,4$ )が条件 $P$ をみたすことを数学的帰納法により示す。
(ⅰ) $i=1$ のとき
①より成り立つ。
(ⅱ) $i=k$( $k=1,2,3$ )のとき $g_k(x)$ が条件 $P$ をみたすと仮定する。このとき、すべての整数 $n$ について $g_k(n+1), \ g_k(n)$ は $5$ の倍数なので、$g_{k+1}(n)$($=g_k(n+1)-g_k(n)$)も $5$ の倍数となる。よって、$g_{k+1}(x)$ は条件 $P$ をみたし、$i=k+1$ のときも成り立つ。
(ⅰ),(ⅱ)より、$g_i(x)$( $i=1,2,3,4$ )が条件 $P$ をみたすことが示された。
以上から $g_4(x)$ は条件 $P$ をみたすことがわかるが、⑵より $g_4(x)=24$ は $5$ の倍数ではないから条件 $P$ をみたさず、矛盾する。
したがって、$f(x)$ は条件 $P$ をみたさない。$$\tag{証明終}$$
解説
⑴は連続 $n$ 整数の積が $n$ の倍数になることが分かれば一発です。
⑵は⑶のヒントになっており、⑵で最高次の係数が $0$ となるように差をとっていくと $24$ という $5$ の倍数でない定数に帰着するので、そこから⑶の背理法を考えることができれば、そこまで難しくはないと思います。
⑶では、「 $f(x)$ が条件 $P$ をみたすと仮定すると $g_4(x)$ も条件 $P$ をみたす…⊛」から矛盾する、という背理法を使いましたが、⊛を説明することは、解答のように数学的帰納法を使わなくても、直接示すこともでき、以下に示します:
$$\begin{eqnarray}
g_4(x) &=& g_3(x+1)-g_3(x) \\
&=& g_2(x+2)-g_2(x+1)-\left\{g_2(x+1)-g_2(x)\right\} \\
&=& g_2(x+2)-2g_2(x+1)+g_2(x) \\
&=& g_1(x+3)-g_1(x+2)-2\left\{g_1(x+2)-g_1(x+1)\right\}+\left\{g_1(x+1)-g_1(x)\right\} \\
&=& g_1(x+3)-3g_1(x+2)+3g_1(x+1)-g_1(x) \\
&=& f(x+4)-f(x+3)-3\left\{f(x+3)-f(x+2)\right\}+3\left\{f(x+2)-f(x+1)\right\}-\left\{f(x+1)-f(x)\right\} \\
&=& f(x+4)-4f(x+3)+6f(x+2)-4f(x+1)+f(x)
\end{eqnarray}$$
$f(x)$ は条件 $P$ をみたすので、すべての整数 $n$ について $f(n+4),$ $f(n+3),$ $f(n+2),$ $f(n+1),$ $f(n)$ は $5$ の倍数となる。
よって、$g_4(n)$ も $5$ の倍数となるので、$g_4(x)$ は条件 $P$ をみたす。
まとめ
今回は、神戸大学理系数学(2021年後期 第1問)の解説をしました。
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