今回は、東京大学理系数学(2022年 第3問)の解説をしたいと思います。
問題
$\mathrm{O}$ を原点とする座標平面上で考える。座標平面上の $2$ 点 $\mathrm{S}(x_1,y_1),$ $\mathrm{T}(x_2,y_2)$ に対し,点 $\mathrm{S}$ が点 $\mathrm{T}$ から十分離れているとは,
$$|x_1-x_2|\geqq 1 \quad \text{または} \quad |y_1-y_2|\geqq 1$$が成り立つことと定義する。
不等式
$$0\leqq x\leqq 3,\quad 0\leqq y \leqq 3$$が表す正方形の領域を $D$ とし,その $2$ つの頂点 $\mathrm{A}(3,0),$ $\mathrm{B}(3,3)$ を考える。さらに,次の条件(ⅰ),(ⅱ)をともに満たす点 $\mathrm{P}$ をとる。
(ⅰ) 点 $\mathrm{P}$ は領域 $D$ の点であり,かつ,放物線 $y=x^2$ 上にある。
(ⅱ) 点 $\mathrm{P}$ は,$3$ 点 $\mathrm{O},\mathrm{A},\mathrm{B}$ のいずれからも十分離れている。
点 $\mathrm{P}$ の $x$ 座標を $a$ とする。⑴ $a$ のとりうる値の範囲を求めよ。
⑵ 次の条件(ⅲ),(ⅳ)をともに満たす点 $\mathrm{Q}$ が存在しうる範囲の面積 $f(a)$ を求めよ。
(ⅲ) 点 $\mathrm{Q}$ は領域 $D$ の点である。
(ⅳ) 点 $\mathrm{Q}$ は,$4$ 点 $\mathrm{O},\mathrm{A},\mathrm{B},\mathrm{P}$ のいずれからも十分離れている。⑶ $a$ は⑴で求めた範囲を動くとする。⑵の $f(a)$ を最小にする $a$ の値を求めよ。
(東京大学)
解答
⑴
領域 $D$ 内で条件(ⅱ)をみたす部分は下図の網掛け部分である。ただし、境界線を含む。
この領域と放物線 $y=x^2$ は放物線の $1\leqq x\leqq \sqrt{3}$ の部分で共有点をもつから、点 $\mathrm{P}$ が条件(ⅰ),(ⅱ)をともに満たす条件は $\boldsymbol{1\leqq a\leqq \sqrt{3}}$ である。
$$\boldsymbol{1\leqq a\leqq \sqrt{3}}$$
⑵
領域 $D$ 内で条件(ⅱ)をみたす部分の面積は、⑴の図より $6$ である。
そこから点 $\mathrm{P}$ を中心とする $1$ 辺の長さが $2$ の正方形の面積 $4$ を引き、引きすぎた部分の面積を足せば $f(a)$ となる。
(ⅰ) $1\leqq a\leqq \sqrt{2}$ のとき
下図より、引きすぎた部分は㋐,㋑,㋒の長方形の面積なので
$$\begin{eqnarray}
f(a) &=& 6-4+(2-a)(2-a^2)+(a-1)(2-a^2)+(a-1)(a^2-1) \\
&=& a^3-2a^2-a+5
\end{eqnarray}$$
(ⅱ) $\sqrt{2}\leqq a\leqq \sqrt{3}$ のとき
下図より、引きすぎた部分は㋓,㋔の長方形の面積なので
$$\begin{eqnarray}
f(a) &=& 6-4+2(a^2-2)+(a-1)\cdot 1 \\
&=& 2a^2+a-3
\end{eqnarray}$$
(ⅰ),(ⅱ)より、求める面積 $f(a)$ は
$$f(a)=
\begin{cases}
\boldsymbol{a^3-2a^2-a+5} & \mathbf{\text{(}} \ \boldsymbol{1\leqq a\leqq\sqrt{2}} \ \mathbf{\text{のとき)}} \\[0.3em]
\boldsymbol{2a^2+a-3} & \mathbf{\text{(}} \ \boldsymbol{\sqrt{2}\leqq a\leqq\sqrt{3}} \ \mathbf{\text{のとき)}}
\end{cases}$$
$$f(a)=
\begin{cases}
\boldsymbol{a^3-2a^2-a+5} & \mathbf{\text{(}} \ \boldsymbol{1\leqq a\leqq\sqrt{2}} \ \mathbf{\text{のとき)}} \\[0.3em]
\boldsymbol{2a^2+a-3} & \mathbf{\text{(}} \ \boldsymbol{\sqrt{2}\leqq a\leqq\sqrt{3}} \ \mathbf{\text{のとき)}}
\end{cases}$$
⑶
(ⅰ) $1\leqq a\leqq \sqrt{2}$ のとき
$$f(a)=a^3-2a^2-a+5$$より
$$\begin{eqnarray}
f'(a) &=& 3a^2-4a-1=3\left(a-\dfrac{2}{3}\right)^2-\dfrac{7}{3} \\
&\leqq& 5-4\sqrt{2}=\sqrt{25}-\sqrt{32}\lt 0
\end{eqnarray}$$となるので $f(a)$ は単調減少であり、$a=\sqrt{2}$ で最小となる。
(ⅱ) $\sqrt{2}\leqq a\leqq \sqrt{3}$ のとき
$$f(a)=2a^2+a-3$$より
$$f'(a)=4a+1\gt 0$$となるので $f(a)$ は単調増加であり、$a=\sqrt{2}$ で最小となる。
(ⅰ),(ⅱ)より、$f(a)$ を最小にする $a$ の値は $a=\boldsymbol{\sqrt{2}}$ である。
$$\boldsymbol{\sqrt{2}}$$
解説
図形や座標の問題を文章で説明する問題は長文になりがちなので、読み落としのないよう丁寧に読み進めることが重要です。
⑵は $a=\sqrt{2}$ を境目に $f(a)$ の求め方が変わることに注意しながら、効率よく面積を求めましょう。
ちなみに今回のように、場合分けの境目をどっちにいれるべきか悩む人もいるでしょうが、個人的には「どっちでもいい派」です。
つまり「 $1\leqq a\leqq \sqrt{2}$ と $\sqrt{2}\leqq a\leqq \sqrt{3}$ 」でも「 $1\leqq a\leqq \sqrt{2}$ と $\sqrt{2}\lt a\leqq \sqrt{3}$ 」でも「 $1\leqq a\lt \sqrt{2}$ と $\sqrt{2}\leqq a\leqq \sqrt{3}$ 」でも、どれでもいいと思います。本解答では1つめの表記をしていますが、この場合、境目で関数の値が連続であることが条件です。
まとめ
今回は、東京大学理系数学(2022年 第3問)の解説をしました。
ほかの問題にもチャレンジしよう!
東京大学 理系数学 2022年 第1問 解説
東京大学 理系数学 2022年 第2問 解説
東京大学 理系数学 2022年 第3問 解説
東京大学 理系数学 2022年 第4問 解説
東京大学 理系数学 2022年 第5問 解説
東京大学 理系数学 2022年 第6問 解説