数学過去問解説

京都大学 理学部特色入試(数学)2021年度 第3問 解説

ゆーきち
ゆーきち
こんにちは、ゆーきちです!

今回は、京都大学理学部特色入試・数学(2021年度 第3問)の解説をしたいと思います。

問題

 以下の条件(ⅰ),(ⅱ),(ⅲ)を満たす実数の列 $x_1,x_2,\dots,x_{1000}$ は存在するか.

(ⅰ) $x_1=\dfrac{1}{2}$

(ⅱ) $k=2,3,\dots,1000$ に対し,$x_k$ は
$$\dfrac{x_{k-1}+99}{100},\quad-\dfrac{100x_{k-1}}{99x_{k-1}-1}$$のいずれかに等しい.ただし,$x_{k-1}=\dfrac{1}{99}$ のときは $x_k=\dfrac{x_{k-1}+99}{100}$ とする.

(ⅲ) $\dfrac{49}{100}\lt x_{1000}\lt\dfrac{51}{100}$

(京都大学)

解答

条件を満たす実数の列 $x_1,x_2,\dots,x_{1000}$ は存在しないことを示す。

その上で、$2$ 以上のすべての整数 $k$ について、$x_k=\dfrac{x_{k-1}+99}{100}, \ $$x_k=-\dfrac{100x_{k-1}}{99x_{k-1}-1}$ の両方が
$$|1-x_k|\leqq 0.1 \ \text{または} \ |-1-x_k|\leqq 0.1$$のいずれかを満たすこと $\cdots\text{①}$ を数学的帰納法により示す。

(Ⅰ) $k=2$ のとき
$$\begin{array}{c}
\left|1-\dfrac{x_1+99}{100}\right|=\dfrac{1}{200}\leqq 0.1 \\
\left|-1-\left(-\dfrac{100x_1}{99x_1-1}\right)\right|=\dfrac{3}{97}\leqq 0.1
\end{array}$$より成り立つ。

(Ⅱ) $k=\ell$( $\ell$ は $2$ 以上の整数)のとき①が成り立つ、すなわち
$$|1-x_\ell|\leqq 0.1 \ \text{または} \ |-1-x_\ell|\leqq 0.1$$のいずれかが成り立つと仮定し、$x_{\ell+1}=\dfrac{x_\ell+99}{100}, \ $$x_{\ell+1}=-\dfrac{100x_\ell}{99x_\ell-1}$ の両方が
$$|1-x_{\ell+1}|\leqq 0.1 \ \text{または} \ |-1-x_{\ell+1}|\leqq 0.1$$のいずれかを満たすことを示す。

(ア) $x_\ell$ が $|1-x_\ell|\leqq 0.1$ を満たす、すなわち $0.9\leqq x_\ell\leqq 1.1$ の範囲にあるとき

$0.999\leqq\dfrac{x_\ell+99}{100}\leqq 1.001$ より
$$\left|1-\dfrac{x_\ell+99}{100}\right|\leqq 0.001\leqq 0.1$$
$-\dfrac{900}{881}\leqq-\dfrac{100x_\ell}{99x_\ell-1}\leqq-\dfrac{1100}{1079}$ より $-1.03\leqq-\dfrac{100x_\ell}{99x_\ell-1}\leqq-1$ なので
$$\left|-1-\left(-\dfrac{100x_\ell}{99x_\ell-1}\right)\right|\leqq 0.03\leqq 0.1$$よって成り立つ。

(イ) $x_\ell$ が $|-1-x_\ell|\leqq 0.1$ を満たす、すなわち $-1.1\leqq x_\ell\leqq -0.9$ の範囲にあるとき

$0.979\leqq\dfrac{x_\ell+99}{100}\leqq 0.981$ より
$$\left|1-\dfrac{x_\ell+99}{100}\right|\leqq 0.021\leqq 0.1$$
$-\dfrac{1100}{1099}\leqq-\dfrac{100x_\ell}{99x_\ell-1}\leqq-\dfrac{900}{901}$ より $-\dfrac{1}{901}\leqq-1-\dfrac{100x_\ell}{99x_\ell-1}\leqq\dfrac{1}{1099}$ なので
$$\left|-1-\left(-\dfrac{100x_\ell}{99x_\ell-1}\right)\right|\leqq \dfrac{1}{901}\leqq 0.1$$よって成り立つ。

(ア),(イ)より
$$|1-x_{\ell+1}|\leqq 0.1 \ \text{または} \ |-1-x_{\ell+1}|\leqq 0.1$$のいずれかが成り立つ。

(Ⅰ),(Ⅱ)より、$2$ 以上のすべての整数 $k$ について①が成り立つことが示された。

したがって、$x_{1000}$ についても
$$|1-x_{1000}|\leqq 0.1 \ \text{または} \ |-1-x_{1000}|\leqq 0.1$$のいずれかが成り立つ。すなわち $x_{1000}$ は
$$\dfrac{90}{100}\leqq x_{1000}\leqq\dfrac{110}{100} \ \text{または} \ -\dfrac{110}{100}\leqq x_{1000}\leqq-\dfrac{90}{100}$$の範囲に存在する値であるから、条件(ⅲ)を満たさない。

以上より、条件を満たす実数の列 $x_1,x_2,\dots,x_{1000}$ は存在しない

答え

存在しない

解説

よく分からない形の数列は、まず実験です。

試しに $k=3$ まで値を求めてみると
$$x_1=\dfrac{1}{2} \ \left\{
\begin{alignat}{2}
x_2 &= \dfrac{199}{200}_{(=0.995)}& \ &\left\{ \begin{aligned}
x_3 &= \dfrac{19999}{20000}_{(\fallingdotseq 1.000)} \\
x_3 &= -\dfrac{19900}{19701}_{(\fallingdotseq -1.010)}
\end{aligned}\right. \\
x_2 &= -\dfrac{100}{97}_{(\fallingdotseq -1.031)}& \ &\left\{ \begin{aligned}
x_3 &= \dfrac{9503}{9700}_{(\fallingdotseq 0.980)} \\
x_3 &= -\dfrac{10000}{9997}_{(\fallingdotseq -1.000)}
\end{aligned}\right. \\
\end{alignat}
\right.$$となり、いずれも $1$ または $-1$ に非常に近い値となっています。これより、実数の列は存在しない方向で証明を進めようと考えます。

「存在しない」ことの証明なので、背理法が思いつきますが、「存在する」と仮定したところで議論が進みません。

そこで先ほどの実験を思い出すと、実数の列が条件(ⅰ),(ⅱ)を満たすとき、それぞれの値は「ほぼ $1$ 」か「ほぼ $-1$ 」であり、それは $x_{1000}$ に関しても同じではないかという発想になります。

数学的帰納法を使うにあたり、実現しうるすべての数列 $x_1,x_2,\cdots,x_{1000}$ が条件を満たさないことを示さなければならないので、実現しうるすべての $x_k$ に対して、$x_{k+1}=\dfrac{x_{k}+99}{100}$ と $x_{k+1}=-\dfrac{100x_{k}}{99x_{k}-1}$ の両方
$$|1-x_{k+1}|\leqq 0.1 \ \text{または} \ |-1-x_{k+1}|\leqq 0.1$$のいずれかを満たすことを示す必要があるので注意しましょう。。

まとめ

今回は、京都大学理学部特色入試・数学(2021年度 第3問)の解説をしました。

ゆーきち
ゆーきち
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!