数学過去問解説

神戸大学 理系数学 2019年[後期] 第3問 解説

ゆーきち
ゆーきち
こんにちは、ゆーきちです!

今回は、神戸大学理系数学(2019年後期 第3問)の解説をしたいと思います。

問題

$N$ を $10$ 以上の整数とする.あたりが $1$ 本,はずれが $2$ 本の合計 $3$ 本からなるくじがある.このくじを用いて次のようなゲームを考える.くじを引いて,あたりかはずれかを確認し,引いたくじをもとに戻す試行をくり返す.はずれを引いた回数が合計 $3$ 回になるか,くじを引いた回数が合計 $N$ 回になった時点でゲームを終了する.終了時までにあたりを引いた回数を $m$ として,ゲームの得点を $m\leqq 3$ のとき $0$ 点,$m\geqq 4$ のとき $m-3$ 点とする.以下の問に答えよ.

⑴ 得点が $0$ 点となる確率 $p_0$ を求めよ.

⑵ $n$ を $1\leqq n\leqq N-6$ をみたす整数とする.得点がちょうど $n$ 点となる確率 $p_n$ を求めよ.

⑶ $1\leqq n\leqq N-6$ をみたす整数 $n$ に対し,⑵で求めた $p_n$ を用いて $a_n=np_n$ とおく.$1\leqq n\leqq N-7$ のとき,次の不等式を示せ.
$$\dfrac{a_{n+1}}{a_n}\leqq\dfrac{14}{15}$$

⑷ ⑶の $a_n$ に対して,$\displaystyle\sum_{n=1}^{N-6}a_n\lt 1$ であることを示せ.

(神戸大学)

解答

得点が $0$ 点となるのは
$$m=k \ \text{(} \ k=0,1,2,3 \ \text{)}$$のときである。

このとき、くじを引く回数は $6$ 回以下、すなわち $N$ 回未満となる。

よって、$m=k$ となるのは、$1$ ~ $(k+2)$ 回目の試行であたりを $k$ 回、はずれを $2$ 回引き、$(k+3)$ 回目の試行ではずれを引くときなので、求める確率は
$$\begin{align}
p_0 &= \displaystyle\sum_{k=0}^{3}{}_{k+2}\mathrm{C}_{2}\left(\dfrac{1}{3}\right)^{k}\left(\dfrac{2}{3}\right)^2\cdot\dfrac{2}{3} \\[0.3em]
&= \dfrac{2^3}{3^3}\cdot\left(\dfrac{{}_{2}\mathrm{C}_{2}}{3^0}+\dfrac{{}_{3}\mathrm{C}_{2}}{3^1}+\dfrac{{}_{4}\mathrm{C}_{2}}{3^2}+\dfrac{{}_{5}\mathrm{C}_{2}}{3^3}\right) \\[0.3em]
&= \dfrac{2^3}{3^3}\cdot\left(1+1+\dfrac{2}{3}+\dfrac{10}{3^3}\right) \\[0.3em]
&= \boldsymbol{\dfrac{656}{729}}
\end{align}$$

答え

$$\boldsymbol{\dfrac{656}{729}}$$

$n\gt 0$ より、得点が $n$ 点のとき
$$\begin{align}
m-3 &= n \\[0.3em]
\therefore \ m &= n+3
\end{align}$$となる。

はずれを引く回数は $3$ 回以下なので、くじを引く回数は $n+6$ 回以下、すなわち $N$ 回以下となる。

よって、$m=n+3$ となるのは、$1$ ~ $(n+5)$ 回目の試行であたりを $(n+3)$ 回、はずれを $2$ 回引き、$(n+6)$ 回目の試行ではずれを引くときなので、求める確率は
$$\begin{align}
p_n &= {}_{n+5}\mathrm{C}_2\left(\dfrac{1}{3}\right)^{n+3}\left(\dfrac{2}{3}\right)^2\cdot\dfrac{2}{3} \\[0.3em]
&= \dfrac{(n+5)(n+4)}{2\cdot1}\cdot\dfrac{1}{3^{n+3}}\cdot\dfrac{2^3}{3^3} \\[0.3em]
&= \boldsymbol{\dfrac{4(n+4)(n+5)}{3^{n+6}}}
\end{align}$$

答え

$$\boldsymbol{\dfrac{4(n+4)(n+5)}{3^{n+6}}}$$

$a_n=\dfrac{4n(n+4)(n+5)}{3^{n+6}} \quad\cdots\text{①}$ より
$$\begin{align}
\dfrac{a_{n+1}}{a_n} &= \dfrac{4(n+1)(n+5)(n+6)}{3^{n+7}}\cdot\dfrac{3^{n+6}}{4n(n+4)(n+5)} \\
&= \dfrac{(n+1)(n+6)}{3n(n+4)}
\end{align}$$

したがって
$$\begin{align}
\dfrac{14}{15}-\dfrac{a_{n+1}}{a_n} &= \dfrac{14}{15}-\dfrac{(n+1)(n+6)}{3n(n+4)} \\[0.3em]
&= \dfrac{1}{3}\left\{\dfrac{14}{5}-\dfrac{(n+1)(n+6)}{n(n+4)}\right\} \\[0.3em]
&= \dfrac{1}{3}\cdot\dfrac{14n(n+4)-5(n+1)(n+6)}{5n(n+4)} \\[0.3em]
&= \dfrac{1}{3}\cdot\dfrac{9n^2+21n-30}{5n(n+4)} \\[0.3em]
&= \dfrac{(3n+10)(n-1)}{5n(n+4)} \\[0.3em]
&\geqq 0 \ \text{(}\because n\geqq 1 \ \text{)}
\end{align}$$より
$$\dfrac{a_{n+1}}{a_n}\leqq\dfrac{14}{15}$$$$\tag{証明終}$$

⑶より、$1\leqq n\leqq N-6$ において
$$\begin{align}
a_n &\leqq \dfrac{14}{15}a_{n-1} \\
&\leqq \left(\dfrac{14}{15}\right)^2a_{n-2} \\[0.3em]
&\leqq \cdots \\
&\leqq \left(\dfrac{14}{15}\right)^{n-1}a_1
\end{align}$$が成り立つ。

ここで、①より
$$a_1=\dfrac{4\cdot5\cdot6}{3^7}=\dfrac{40}{3^6}$$であるから
$$\begin{align}
\displaystyle\sum_{n=1}^{N-6}a_n &\leqq \displaystyle\sum_{n=1}^{N-6}\left(\dfrac{14}{15}\right)^{n-1}a_1 \\
&= \dfrac{40}{3^6}\cdot\dfrac{1-\left(\dfrac{14}{15}\right)^{N-6}}{1-\dfrac{14}{15}} \\
&= \dfrac{200}{243}\left\{1-\left(\dfrac{14}{15}\right)^{N-6}\right\} \\
&\lt \dfrac{200}{243} \\[0.3em]
&\lt 1
\end{align}$$より、題意は示された。$$\tag{証明終}$$

解説

⑴と⑵の考え方は似ており、$(A-1)$ 回目までにあたりを何回か引き、かつ $A$ 回目にはずれを引けばよい、と分かれば答えにたどり着けると思います。

⑷は⑶が無くても解けますが、⑶の誘導を挟むことでよりシンプルに解けるようになっています。

まとめ

今回は、神戸大学理系数学(2019年後期 第3問)の解説をしました。

ゆーきち
ゆーきち
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!