今回は、神戸大学理系数学(2019年 第3問)の解説をしたいと思います。
問題
$n$ を $2$ 以上の整数とする.$2$ 個のさいころを同時に投げるとき,出た目の数の積を $n$ で割った余りが $1$ となる確率を $P_n$ とする.以下の問に答えよ.
⑴ $P_2, \ $$P_3, \ $$P_4$ を求めよ.
⑵ $n\geqq 36$ のとき,$P_n$ を求めよ.
⑶ $P_n=\dfrac{1}{18}$ となる $n$ をすべて求めよ.
(神戸大学)
解答
⑴
$2$ 個のさいころの出た目を $a,b$ とする。
また、$n$ を法として整数 $p$ と $q$ が合同であることを $p\overset{n}{\equiv}q$ と表す。
・$P_2$ について
$ab\overset{2}{\equiv}1$ となるのは、「 $a\overset{2}{\equiv}1$ かつ $b\overset{2}{\equiv}1$ 」のとき、すなわち
$$a=1,3,5,\quad b=1,3,5$$のときであるから
$$P_2=\dfrac{3^2}{6^2}=\boldsymbol{\dfrac{1}{4}}$$
・$P_3$ について
$ab\overset{3}{\equiv}1$ となるのは、「 $a\overset{3}{\equiv}1$ かつ $b\overset{3}{\equiv}1$ 」または「 $a\overset{3}{\equiv}2$ かつ $b\overset{3}{\equiv}2$ 」のとき、すなわち
$$\begin{eqnarray}
(a,b) &=& (1,1),(1,4),(4,1),(4,4), \\
&& (2,2),(2,5),(5,2),(5,5)
\end{eqnarray}$$のときであるから
$$P_3=\dfrac{8}{6^2}=\boldsymbol{\dfrac{2}{9}}$$
・$P_4$ について
$ab\overset{4}{\equiv}1$ となるのは、「 $a\overset{4}{\equiv}1$ かつ $b\overset{4}{\equiv}1$ 」または「 $a\overset{4}{\equiv}3$ かつ $b\overset{4}{\equiv}3$ 」のとき、すなわち
$$(a,b)=(1,1),(1,5),(5,1),(5,5),(3,3)$$のときであるから
$$P_4=\dfrac{5}{6^2}=\boldsymbol{\dfrac{5}{36}}$$
$$P_2=\boldsymbol{\dfrac{1}{4}},\quad P_3=\boldsymbol{\dfrac{2}{9}},\quad P_4=\boldsymbol{\dfrac{5}{36}}$$
⑵
$ab\overset{n}{\equiv}1$ のとき、整数 $k$ を用いて
$$ab=kn+1$$と表せる。
$k\leqq -1$ のとき
$$ab\leqq -1\cdot 36+1=-35$$となるが、$1\leqq ab\leqq 36$ より不適。
$k=0$ のとき
$$ab=0\cdot n+1=1$$となり、これを満たすのは
$$(a,b)=(1,1)$$の $1$ 通りである。
$k\geqq 1$ のとき
$$ab\geqq 1\cdot 36+1=37$$となるが、$1\leqq ab\leqq 36$ より不適。
よって、$n\geqq 36$ のとき
$$P_n=\boldsymbol{\dfrac{1}{36}}$$
$$\boldsymbol{\dfrac{1}{36}}$$
⑶
$$P_n=\dfrac{1}{18}=\dfrac{2}{36}$$より、条件を満たす $(a,b)$ は $2$ 通りである。
$(a,b)=(1,1)$ のとき
$$ab=1\overset{n}{\equiv}1$$より、条件を満たす $(a,b)$ の $1$ つは $(1,1)$ である。
ここで、$(a,b)=(s,t)$( $s\ne t$ )が条件を満たすと仮定すると、$(a,b)=(t,s)$ も条件を満たし、$(1,1)$ と合わせて $3$ 通りとなるので不適。
よって、$a=b$ が必要である。
(ⅰ) $a=b=2$ のとき
$$ab=4=3+1$$より、$n$ は $3$ の約数となるので $n=3$ であるが、⑴より $P_3\ne\dfrac{1}{18}$ なので不適。
(ⅱ) $a=b=3$ のとき
$$ab=9=8+1$$より、$n$ は $8$ の約数となるので $n=2,\,$$4,\,$$8$ である。
$n=2,4$ のとき、⑴より $P_2\ne\dfrac{1}{18}, \ $$P_4\ne\dfrac{1}{18}$ なので不適。
$n=8$ のとき、$(a,b)=(5,5)$ とすると
$$ab=25\overset{8}{\equiv}1$$より、条件を満たすので不適。
(ⅲ) $a=b=4$ のとき
$$ab=16=15+1$$より、$n$ は $15$ の約数となるので $n=3,\,$$5,\,$$15$ である。
$n=3$ のとき、⑴より $P_3\ne\dfrac{1}{18}$ なので不適。
$n=5$ のとき、$(a,b)=(2,3)$ とすると
$$ab=6\overset{5}{\equiv}1$$より、条件を満たすので不適。
$n=15$ のとき
$$ab=1,16,31$$であり、これを満たすのは $(a,b)=(1,1),(4,4)$ の他には存在しないので適する。
(ⅳ) $a=b=5$ のとき
$$ab=25=24+1$$より、$n$ は $24$ の約数となるので $n=2,\,$$3,\,$$4,\,$$6,\,$$8,\,$$12,\,$$24$ である。
$n=2,3,4$ のとき、⑴より $P_2\ne\dfrac{1}{18}, \ $$P_3\ne\dfrac{1}{18}, \ $$P_4\ne\dfrac{1}{18}$ なので不適。
$n=6$ のとき
$$ab=1,7,13,19,25,31$$であり、これを満たすのは $(a,b)=(1,1),(5,5)$ の他には存在しないので適する。
$n=8$ のとき、(ⅱ)より不適。
$n=12$ のとき
$$ab=1,13,25$$であり、これを満たすのは $(a,b)=(1,1),(5,5)$ の他には存在しないので適する。
$n=24$ のとき
$$ab=1,25$$であり、これを満たすのは $(a,b)=(1,1),(5,5)$ の他には存在しないので適する。
(ⅴ) $a=b=6$ のとき
$$ab=36=35+1$$より、$n$ は $35$ の約数となるので $n=5,\,$$7,\,$$35$ である。
$n=5$ のとき、(ⅲ)より不適。
$n=7$ のとき、$(a,b)=(2,4)$ とすると
$$ab=8\overset{7}{\equiv}1$$より、条件を満たすので不適。
$n=35$ のとき
$$ab=1,36$$であり、これを満たすのは $(a,b)=(1,1),(6,6)$ の他には存在しないので適する。
(ⅰ)~(ⅴ)より、求める $n$ の値は $n=\mathbf{6},\,$$\mathbf{12},\,$$\mathbf{15},\,$$\mathbf{24},\,$$\mathbf{35}$ である。
$$\mathbf{6},\mathbf{12},\mathbf{15},\mathbf{24},\mathbf{35}$$
解説
⑴は、合同式を使わずに表を使うなどしても大丈夫です。答えだけは合わせましょう。
⑵は、感覚的には $\dfrac{1}{36}$ と分かりますが、どう記述するかがポイントです。
⑶は、⑴,⑵から $(a,b)=(1,1)$ が $n$ によらず条件を満たすことが分かるので、残る組は $1$ つだけとなります。
また、⑴,⑵から $5\leqq n\leqq 35$ ということが分かっているので、最終手段としてしらみつぶしに求める手があります。
まとめ
今回は、神戸大学理系数学(2019年 第3問)の解説をしました。
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