数学過去問解説

東京大学 理系数学 2022年 第4問 解説

ゆーきち
ゆーきち
こんにちは、ゆーきちです!

今回は、東京大学理系数学(2022年 第4問)の解説をしたいと思います。

問題

 座標平面上の曲線$$C:\quad y=x^3-x$$を考える。

⑴ 座標平面上のすべての点 $\mathrm{P}$ が次の条件(ⅰ)を満たすことを示せ。
 (ⅰ) 点 $\mathrm{P}$ を通る直線 $\ell$ で,曲線 $C$ と相異なる $3$ 点で交わるものが存在する。

⑵ 次の条件(ⅱ)を満たす点 $\mathrm{P}$ のとりうる範囲を座標平面上に図示せよ。
 (ⅱ) 点 $\mathrm{P}$ を通る直線 $\ell$ で,曲線 $C$ と相異なる $3$ 点で交わり,かつ,直線 $\ell$ と曲線 $C$ で囲まれた $2$ つの部分の面積が等しくなるものが存在する。

(東京大学)

解答

$\mathrm{P}$ の座標を $(a,b)$ とおく。

$\ell$ が $y$ 軸に平行なとき、$\ell$ と $C$ が相異なる $3$ 点で交わることはないので、$\ell$ は $y$ 軸に平行ではない。

よって、$\ell$ の傾きを $k$ とおくと、$\ell$ の方程式は
$$y=k(x-a)+b$$となる。これと $C$ の方程式から $y$ を消去すると
$$\begin{array}{c}
x^3-x=k(x-a)+b \\
\therefore\quad x^3-(k+1)x+ak-b=0\quad\cdots\text{①}
\end{array}$$

①の解は $\ell$ と $C$ の共有点の $x$ 座標を表すので、①が相異なる $3$ つの実数解をもてば条件(ⅰ)がみたされる。

①の左辺を $f(x)$ とおくと
$$f'(x)=3x^2-(k+1)$$

$k\leqq -1$ のとき $f'(x)\geqq 0$ なので $f(x)$ は単調増加であり、①が相異なる $3$ つの実数解をもつことはない。

$k\gt -1$ のとき
$$f'(x)=3\left(x+\sqrt{\dfrac{k+1}{3}}\right)\left(x-\sqrt{\dfrac{k+1}{3}}\right)$$より、増減表は次のようになる。
$$\begin{array}{c||c|c|c|c|c}\hline
x & \cdots & -\sqrt{\dfrac{k+1}{3}} & \cdots & \sqrt{\dfrac{k+1}{3}} & \cdots \\ \hline
f’(x) & + & 0 & – & 0 & + \\ \hline
f(x) & \nearrow & \text{極大} & \searrow & \text{極小} & \nearrow \\ \hline
\end{array}$$

また、$\displaystyle\lim_{x\to\pm\infty}f(x)=\pm\infty$(複号同順)より、極大値と極小値が異符号、すなわちこれらの積が負となればよい。

$$\begin{array}{c}
f\left(-\sqrt{\dfrac{k+1}{3}}\right)f\left(\sqrt{\dfrac{k+1}{3}}\right)\lt 0 \\
\left\{2\left(\dfrac{k+1}{3}\right)^\frac{3}{2}+ak-b\right\}\left\{-2\left(\dfrac{k+1}{3}\right)^\frac{3}{2}+ak-b\right\}\lt 0 \\
(ak-b)^2-\dfrac{4}{27}(k+1)^3\lt 0\quad\cdots\text{②}
\end{array}$$

②の左辺は $k$ の $3$ 次式かつ最高次の係数が負なので、十分大きい実数 $k$ をとることで②は成り立つ。すなわち、任意の実数 $a,b$ に対して、①が相異なる $3$ つの実数解をもつような実数 $k$ が存在する。

したがって、座標平面上のすべての点 $\mathrm{P}$ が条件(ⅰ)をみたす。$$\tag{証明終}$$

⑴より、座標平面上のすべての点 $\mathrm{P}$ が条件(ⅰ)をみたすので、$\ell$ と $C$ の交点の $x$ 座標を $\alpha,\beta,\gamma$( $\alpha\lt\beta\lt\gamma$ )とおく。

このとき
$$f(x)=(x-\alpha)(x-\beta)(x-\gamma)\quad\cdots\text{③}$$と因数分解できる。

$\ell$ と $C$ で囲まれた $2$ つの部分の面積が等しいという条件より
$$\begin{eqnarray}
\displaystyle\int_\alpha^\beta \left[\left(x^3-x\right)-\{k(x-a)+b\}\right]dx &=& \displaystyle\int_\beta^\gamma \left[\{k(x-a)+b\}-\left(x^3-x\right)\right]dx \\
\displaystyle\int_\alpha^\beta f(x)dx + \displaystyle\int_\beta^\gamma f(x)dx &=& 0 \\
\displaystyle\int_\alpha^\gamma f(x)dx &=& 0 \\
\displaystyle\int_\alpha^\gamma (x-\alpha)(x-\beta)(x-\gamma)dx &=& 0 \quad\text{(}\because\text{③)}
\end{eqnarray}$$

③の左辺に対して部分積分を行うと
$$\begin{eqnarray}
0 &=& \displaystyle\int_\alpha^\gamma (x-\alpha)(x-\beta)(x-\gamma)dx \\
&=& \displaystyle\int_\alpha^\gamma (x-\alpha)\{(x-\alpha)+(\alpha-\beta)\}(x-\gamma)dx \\
&=& \displaystyle\int_\alpha^\gamma (x-\alpha)^2(x-\gamma)dx
+ (\alpha-\beta)\displaystyle\int_\alpha^\gamma (x-\alpha)(x-\gamma)dx \\
&=& \left[\dfrac{1}{3}(x-\alpha)^3(x-\gamma)-\dfrac{1}{12}(x-\alpha)^4\right]_\alpha^\gamma
+ (\alpha-\beta)\left[\dfrac{1}{2}(x-\alpha)^2(x-\gamma)-\dfrac{1}{6}(x-\alpha)^3\right]_\alpha^\gamma \\
&=& -\dfrac{1}{12}(\gamma-\alpha)^4 -\dfrac{1}{6}(\alpha-\beta)(\gamma-\alpha)^3 \\
&=& -\dfrac{1}{12}(\gamma-\alpha)^3(\alpha+\gamma-2\beta)
\end{eqnarray}$$

$\gamma-\alpha \ne 0$ より
$$\alpha+\gamma-2\beta=0\quad\cdots\text{④}$$

また、$f(x)$ の $2$ 次の係数は $0$ なので、解と係数の関係より
$$\alpha+\beta+\gamma=0\quad\cdots\text{⑤}$$

④,⑤より $\beta=0$ であり、このとき $\ell$ と $C$ は原点を含む相異なる $3$ 点で交わる。

したがって、$\ell$ は原点を通るので $ak-b=0\quad\cdots\text{⑥}$ となる。

⑴より、$\ell$ と $C$ が相異なる $3$ 点で交わるための条件は $k\gt -1$ かつ②であるが、⑥のとき、$k\gt -1$ なるすべての実数 $k$ で②は成り立つ。

よって、条件(ⅱ)をみたす点 $\mathrm{P}$ が存在するための条件は「⑥かつ $k\gt -1$ 」をみたす実数 $k$ が存在することである。

(ア) $a=0$ のとき
⑥より $b=0$ であり、このとき $k\gt -1$ をみたす実数 $k$ は存在する。

(イ) $a\ne 0$ のとき
⑥より $k=\dfrac{b}{a}$ であり、$k\gt -1$ より $\dfrac{b}{a}\gt -1$ である。
すなわち
$$\begin{cases}
b\gt -a & \text{(} \ a\gt 0 \ \text{のとき)} \\
b\lt -a & \text{(} \ a\lt 0 \ \text{のとき)}
\end{cases}$$

(ア),(イ)より、条件(ⅱ)をみたす点 $\mathrm{P}$ のとりうる範囲は、下図の網掛け部分である。ただし、境界は原点のみ含む

答え

下図の網掛け部分(境界は原点のみ含む)

解説

この問題は「状況を図的にイメージできる力」「式を用いて論理的に説明する力」の両方が求められる問題となっており、得意な人と苦手な人に分かれそうな良問だと思います。

⑴は座標平面上のどの点を与えられても、その点を通るように「傾きのとても大きい直線」を引けば、必ず $C$ と相異なる $3$ 点で交わる、ということを式を用いて説明しています。
$3$ 次方程式 $f(x)=0$ が異なる $3$ つの実数解をもつとき、$f(x)$ は $2$ つの極値をもち、それらの積が負になる、というのは練習問題などで経験しておきたい内容です。

⑵は、$2$ つの面積が等しいとき、必ず $\ell$ は原点を通るということを示すのが山場だと思います。本解答のように部分積分を行うことで計算量・計算ミスを減らしましょう。

まとめ

今回は、東京大学理系数学(2022年 第4問)の解説をしました。

ゆーきち
ゆーきち
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!