今回は、高校生クイズで出題された計算問題にチャレンジしてみます。
問題
宇宙エレベーターで静止衛星までの移動にかかる時間を計算しなさい。
ただし、条件は以下のとおりとする。
- エレベーターは地球で静止した状態から $0.1 \ [\mathrm{G}]$ で $100$ 秒間加速し最高速度に達する
- 以後減速を始めるまで速度を保ったままで移動し $0.01 \ [\mathrm{G}]$ で減速を行い、速度 $0$ で静止衛星に到着する
- $1 \ [\mathrm{G}] = 9.8 \ [\mathrm{m/s^2}]$
- 静止衛星は上空 $36000 \ [\mathrm{km}]$ にある
ヒント
- 等加速度直線運動の公式を使いましょう。
初速 $v_0$ で移動を開始した物体が、一定の加速度 $a$ で時間 $t$ ・距離 $x$だけ直線運動した結果、速度が $v$ になったとすると、以下の式が成り立ちます。
・$v = v_0 + at$
・$x = v_0t + \dfrac{1}{2}at^2$ - $v-t$ 図を使う方法もあります。
$v-t$ 図においてグラフで囲まれた面積は、移動距離を表します。
解答
解法1
等加速度直線運動の公式を用いる方法です。
エレベーターが静止した状態(初速 $0$ )から $0.1 \ [\mathrm{G}]$ で $100$ 秒間($=t_1$ とする)加速した後の最高速度を $v \ [\mathrm{m/s}]$ とすると
$$\begin{eqnarray}
v &=& \underbrace{ 0 }_{ v_0 } + \underbrace{ (0.1 \times 9.8) \times 100 }_{ at } \\[0.5em]
&=& 98 \ [\mathrm{m/s}]
\end{eqnarray}$$
また、加速中にエレベーターが移動する距離を $d_1 \ [\mathrm{m}]$ とすると
$$\begin{eqnarray}
d_1 &=& \underbrace{ 0 \times 100 }_{ v_0t } + \underbrace{ \dfrac{1}{2} \times (0.1 \times 9.8) \times 100^2 }_{ \frac{1}{2}at^2 } \\
&=& 4900 \ [\mathrm{m}]
\end{eqnarray}$$
次に、エレベーターが減速している時間を $t_3 \ [\mathrm{s}]$ とすると
$$\begin{eqnarray}
0 &=& \underbrace{ 98 }_{ v_0 } + \underbrace{ (-0.01 \times 9.8) t_3 }_{ at } \\[0.5em]
t_3 &=& 1000 \ [\mathrm{s}]
\end{eqnarray}$$
また、減速中にエレベーターが移動する距離を $d_3 \ [\mathrm{m}]$ とすると
$$\begin{eqnarray}
d_3 &=& \underbrace{ 98 \times 1000 }_{ v_0t } + \underbrace{ \dfrac{1}{2} \times (-0.01 \times 9.8) \times 1000^2 }_{ \frac{1}{2}at^2 } \\
&=& 49000 \ [\mathrm{m}]
\end{eqnarray}$$
よって、エレベーターが等速移動する距離を $d_2 \ [\mathrm{m}]$ とすると$$\begin{eqnarray}
d_1 + d_2 + d_3 &=& 36000 \times 10^3 \\[0.5em]
d_2 &=& 36000000 \ – \ (d_1 + d_3) \\
&=& 36000000 \ – \ (4900 + 49000) \\
&=& 35946100 \ [\mathrm{m}]
\end{eqnarray}$$
したがって、エレベーターが等速移動している時間を $t_2 \ [\mathrm{s}]$ とすると
$$\begin{eqnarray}
t_2 &=& \dfrac{d_2}{v} = \dfrac{35946100}{98} \\
&=& 366796.9 \\
&=& 366797 \ [\mathrm{s}]
\end{eqnarray}$$
以上より、エレベーターが静止衛星まで移動するのにかかる時間は
$$\begin{eqnarray}
t_1 + t_2 + t_3 &=& 100 + 366797 + 1000 \\
&=& 367897 \ [\mathrm{s}] \\
&=& \mathbf{102 \ [h] \ 11 \ [m] \ 37 \ [s]}
\end{eqnarray}$$
解法2
$\boldsymbol{ v-t }$ 図を用いる方法です。
縦軸を$v$(速度)、横軸を $t$(時間)とすると、グラフの概形は下図のようになります。
このグラフで囲まれる台形の面積は、エレベーターの移動距離 $36000 \ [\mathrm{km}]$ を表すので、総移動時間を $T \ [\mathrm{s}]$ とすると
$$\begin{eqnarray}
\underbrace{ \{ T-(t_1+t_3)+T \} }_{ \text{(上底+下底)} } \times \underbrace{ v }_{ \text{高さ} } \times \dfrac{1}{2} &=& 36000 \times 10^3 \\
\{ T-(100+1000)+T \} \times 98 \times \dfrac{1}{2} &=& 36000000
\end{eqnarray}$$
$$\begin{eqnarray}
T &=& 367896.9 \\
&=& 367897 \ [\mathrm{s}] \\
&=& \mathbf{102 \ [h] \ 11 \ [m] \ 37 \ [s]}
\end{eqnarray}$$
102時間11分37秒
まとめ
今回は、「高校生クイズ」で出題された、宇宙エレベーターの移動時間を求める計算問題にチャレンジしてみました。
結論は102時間11分37秒、、いつかはこんな乗り物が実現する日が来るのでしょうか。楽しみですね!
- 等加速度直線運動の公式を使う
- 加速局面→減速局面→等速局面の順に時間・距離を求める
- $v-t$ 図を使う