今回は、頭脳王で出題された計算問題にチャレンジしてみます。
問題
太陽の210億倍の質量を持つブラックホールの直径は?
ただし、条件は以下のとおりとする。
- ブラックホールの半径の定義
「重力源となる星から光速で放った物体の運動エネルギーと、重力による位置エネルギーの総和が0となるような星の半径の値」 - 太陽の質量:$1.99 \times 10^{30} \ [\mathrm{kg}]$
- 万有引力定数 $G = 6.67 \times 10^{-11} \ [\mathrm{m}^3 \cdot \mathrm{kg}^{-1} \cdot \mathrm{s}^{-2}]$
- 光速は $3.00 \times 10^8 \ [\mathrm{m/s}]$
- 有効数字は3桁、単位はkmで解答
ヒント
- 重力(万有引力)による位置エネルギーは、万有引力定数 $G$ 、2物体の質量 $M,m$ 、2物体の中心間距離 $r$ を用いて $-G \dfrac{Mm}{r}$ と表されます。
- 問題は直径を問われているので、半径を答えないように注意しましょう。
解答
ブラックホールの質量($M$ とする)は、太陽の210億倍なので
$$\begin{eqnarray}
M &=& 1.99 \times 10^{30} \times 210 \times 10^8 \\
&=& 4.179 \times 10^{40} \ [\mathrm{kg}]
\end{eqnarray}$$
ブラックホールの半径を $r$ とする。
また、「重力源となる星から光速で放った物体」の質量を $m$ とし、光速を $c$ とする。
条件(力学的エネルギー保存則)より、重力源となる星の表面(星の中心から半径 $r$ だけ離れた地点)における運動エネルギーと重力(万有引力)による位置エネルギーの総和が0なので
$$\begin{eqnarray}
\dfrac{1}{2}mc^2 \ – \ G \dfrac{Mm}{r} &=& 0 \\
\dfrac{1}{2}c^2 &=& G \dfrac{M}{r}
\end{eqnarray}$$
$$\begin{eqnarray}
r &=& \dfrac{2GM}{c^2} \\
&=& \dfrac{2 \times 6.67 \times 10^{-11} \times 4.179 \times 10^{40}}{( 3.00 \times 10^8 )^2} \\
&=& 6.194 \times 10^{13} \ [\mathrm{m}] \\
&=& 6.194 \times 10^{10} \ [\mathrm{km}]
\end{eqnarray}$$
求めるのは直径なので、上で求めた半径 $r$ を2倍して
$$\begin{eqnarray}
2r &=& 2 \times 6.194 \times 10^{10} \\
&=& \mathbf{1.24 \times 10^{11} \ [km]}
\end{eqnarray}$$
1.24×1011km(1240億km)
まとめ
今回は、「頭脳王」で出題された、ブラックホールの直径を求める計算問題にチャレンジしてみました。
結論は1240億km、、質量がとてつもなく大きいので、このように大きな直径の星でもブラックホールになるのですね。
ちなみに、途中式に出てきた $r = \dfrac{2GM}{c^2}$ は「シュワルツシルト半径」と呼ばれるもので、$M$ に星の質量を代入することで、その星がブラックホールになるときの半径を求めることができます。
実際の値を代入してみると、太陽では約3km、地球では約9mmまで半径が小さくなるとブラックホールとなります。
- 光速 $c$ や星の半径 $r$ を用いて、力学的エネルギー保存則を使う
- 半径を2倍して直径を求める