おもしろ数学

3次方程式の解の公式

ゆーきち
ゆーきち
こんにちは、ゆーきちです!

今回は、3次方程式の解の公式について解説したいと思います。

2次方程式の解の公式は中学校のとき習ったと思います。

2次方程式 $ax^2+bx+c=0 \ (a \ne 0)$ の解は
$$x = \dfrac{-b \pm \sqrt{ b^2-4ac }}{2a}$$

そうそう。こんな感じでした。

では、次数がもう1つ上がって、3次方程式になると解はどのように表されるのでしょうか?
導出の過程を丁寧に解説していきます!

3次方程式の解の公式

結論

では先に、3次方程式の解の公式をご紹介します。

3次方程式 $ax^3+bx^2+cx+d=0 \ (a \ne 0)$ の解は
$$\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
x_1 = \sqrt[ 3 ]{ -q + \sqrt{ q^2+p^3 } } + \sqrt[ 3 ]{ -q \ – \ \sqrt{ q^2+p^3 } } -\dfrac{A}{3}\\
x_2 = \sqrt[ 3 ]{ -q + \sqrt{ q^2+p^3 } } \ \omega + \sqrt[ 3 ]{ -q \ – \ \sqrt{ q^2+p^3 } } \ \omega^2 -\dfrac{A}{3}\\
x_3 = \sqrt[ 3 ]{ -q + \sqrt{ q^2+p^3 } } \ \omega^2 + \sqrt[ 3 ]{ -q \ – \ \sqrt{ q^2+p^3 } } \ \omega -\dfrac{A}{3}
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$$

ただし
$$\begin{eqnarray}
p &=& \dfrac{-A^2+3B}{9} \ , \ q = \dfrac{2A^3-9AB+27C}{54} \\
A &=& \dfrac{b}{a} \ , \ B=\dfrac{c}{a} \ , \ C=\dfrac{d}{a} \\
\omega &=& \dfrac{-1+\sqrt{ 3 }i}{2}
\end{eqnarray}$$

2次方程式の解の公式に比べるとはるかに複雑ですね。

これがどのように導き出されるか、順に説明していきます。

導出

手順

3次方程式 $ax^3+bx^2+cx+d=0 \ (a \ne 0)$ の解は、以下の手順で求めることができます。

  1. 両辺を $a$ で除す
  2. 立方完成
  3. 変数を2つに増やす
  4. 変数を戻していく

順に見ていきましょう。

①両辺を $a$ で除す

3次方程式 $ax^3+bx^2+cx+d=0 \ (a \ne 0)$ の両辺を $a$ で除すと
$$x^3+\dfrac{b}{a}x^2+\dfrac{c}{a}x+\dfrac{d}{a}=0 \tag{1}$$となります。

ゆーきち
ゆーきち
両辺を文字で除すときは、0で割っていないか注意しよう。
今回は、前提から $a \ne 0$ だから問題ないね!

式(1)で$A=\dfrac{b}{a} \ , \ B=\dfrac{c}{a} \ , \ C=\dfrac{d}{a}$ とおくと
$$x^3+Ax^2+Bx+C=0 \tag{2}$$となります。

②立方完成

2次式で平方完成をしたのを覚えていますか?
平方完成では、$x^2-4x+6 = (x-2)^2+2$ のように、1次の項を見かけ上消すような操作をしました。

3次式では、これに対応した立方完成という操作をして、2次の項を見かけ上消します。

式(2)を立方完成すると
$$\left( x+\dfrac{A}{3} \right)^3 + \left( -\dfrac{A^2}{3}+B \right) \left( x + \dfrac{A}{3} \right) + \dfrac{2}{27}A^3 \ – \ \dfrac{AB}{3} + C = 0$$となります。

ここで $X=x+\dfrac{A}{3}$ と変数を変換します。
また同時に $3p=-\dfrac{A^2}{3}+B \ , \ 2q=\dfrac{2}{27}A^3 \ – \ \dfrac{AB}{3} + C$ とおくと
$$X^3+3pX+2q=0 \tag{3}$$とスッキリした形まで変形できました。

③変数を2つに増やす

式(3)は $X$ に関する1変数の方程式ですが、ここであえて $X=u+v \ (\ne 0)$ とおき2変数にします。

$X=u+v=0$ とすると、式(3)より $q=0$ となり、式(3)は
$$\begin{eqnarray}
X^3+3pX=0 \ & \Longleftrightarrow & \ X(X^2+3p)=0 \\
& \Longleftrightarrow & \ X=0 \ , \ \pm \sqrt{ -3p }
\end{eqnarray}$$のように簡単に解けてしまいます。

一般解が知りたい状況においてこれはナンセンスですから、以下 $X=u+v \ne 0$ とします。

$$\begin{eqnarray}
X^3+3pX+2q=0 \tag{3} \\
(u+v)^3+3p(u+v)+2q=0
\end{eqnarray}$$

これを展開して整理すると
$$u^3+v^3+2q+3(uv+p)(u+v)=0 \tag{4}$$となります。

ここで、式(4)が成り立つためには
$$\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{lr}
u^3+v^3+2q = 0 & \quad (5) \\
uv+p = 0 & \quad (6)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$$の2式が成り立てば十分です。

式(5)に関しては $2q$ を右辺に移項し、式(6)に関しては $p$ を右辺に移項し両辺を $3$ 乗すると
$$\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{lr}
u^3+v^3 = -2q & \quad (7) \\
u^3v^3 = -p^3 & \quad (8)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$$となります。

式(7),(8)は $t$ に関する2次方程式
$$t^2 +2qt -p^3 = 0 \tag{9}$$の2解が $u^3 \ , \ v^3$ であるときの解と係数の関係を表しています。

式(9)を解くと
$$t=-q \pm \sqrt{ q^2+p^3 }$$となりますが、$u^3 \ , \ v^3$ は対称である(文字を入れ替えても同じ式が成り立つ)ため、$u^3$ を「+」の方、$v^3$ を「-」の方としても一般性は失われません。

$$\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{lr}
u^3 = -q + \sqrt{ q^2+p^3 } & \quad (9) \\
v^3 = -q \ – \ \sqrt{ q^2+p^3 } & \quad (10)
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$$

式(9),(10)は明らかに式(5)を満たすので、あとは式(6)について考えればよいですね。

式(9),(10)を解くと、以下のようにそれぞれ3つの解が求まります。
ただし、$\omega = \dfrac{-1+\sqrt{ 3 }i}{2}$ です。

$$\begin{eqnarray}
\begin{array}{l}
\left\{
\begin{array}{l}
u_1 = \sqrt[ 3 ]{ -q + \sqrt{ q^2+p^3 } } \\
u_2 = \sqrt[ 3 ]{ -q + \sqrt{ q^2+p^3 } } \ \omega \\
u_3 = \sqrt[ 3 ]{ -q + \sqrt{ q^2+p^3 } } \ \omega^2
\end{array}
\right. \\
\left\{
\begin{array}{l}
v_1 = \sqrt[ 3 ]{ -q \ – \ \sqrt{ q^2+p^3 } } \\
v_2 = \sqrt[ 3 ]{ -q \ – \ \sqrt{ q^2+p^3 } } \ \omega \\
v_3 = \sqrt[ 3 ]{ -q \ – \ \sqrt{ q^2+p^3 } } \ \omega^2
\end{array}
\right.
\end{array}
\end{eqnarray}$$

どうして $ \omega $ (虚数)が出てくるの?

一般に、$x^3=a$ という3次方程式は $(x-\sqrt[ 3 ]{ a })(x^2+\sqrt[ 3 ]{ a }x+\sqrt[ 3 ]{ a }^2)=0$ と変形でき、これを解くと
$$x=\sqrt[ 3 ]{ a } \ , \ \sqrt[ 3 ]{ a } \dfrac{-1 \pm \sqrt{ 3 }i}{2}$$となり、ここで虚数が出てきます。

$\omega = \dfrac{-1+\sqrt{ 3 }i}{2}$ とおくと、$\omega^2 = \dfrac{-1-\sqrt{ 3 }i}{2}$なので、3次方程式 $x^3=a$ の3解は $x=\sqrt[ 3 ]{ a } \ , \ \sqrt[ 3 ]{ a } \omega \ , \ \sqrt[ 3 ]{ a } \omega^2$ と表せるのです。

$(u,v)$ の組み合わせは $3 \times 3 = 9$ 通り考えられますが、式(6)を満たす組み合わせは $(u_1,v_1),(u_2,v_3),(u_3,v_2)$ の3通りに限られます。

④変数を戻していく

ここまでの議論から、変数 $X$ に関する3次方程式(式(3))の解は以下の3つであることが分かりました。

$$\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
X_1 = u_1 + v_1 = \sqrt[ 3 ]{ -q + \sqrt{ q^2+p^3 } } + \sqrt[ 3 ]{ -q \ – \ \sqrt{ q^2+p^3 } } \\
X_2 = u_2 + v_3 = \sqrt[ 3 ]{ -q + \sqrt{ q^2+p^3 } } \ \omega + \sqrt[ 3 ]{ -q \ – \ \sqrt{ q^2+p^3 } } \ \omega^2 \\
X_3 = u_3 + v_2 = \sqrt[ 3 ]{ -q + \sqrt{ q^2+p^3 } } \ \omega^2 + \sqrt[ 3 ]{ -q \ – \ \sqrt{ q^2+p^3 } } \ \omega
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$$

$X=x+\dfrac{A}{3}$ と変換していましたから、$x=X-\dfrac{A}{3}$ と元に戻すと、結論の式が得られます。

3次方程式 $ax^3+bx^2+cx+d=0 \ (a \ne 0)$ の解は
$$\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
x_1 = \sqrt[ 3 ]{ -q + \sqrt{ q^2+p^3 } } + \sqrt[ 3 ]{ -q \ – \ \sqrt{ q^2+p^3 } } -\dfrac{A}{3}\\
x_2 = \sqrt[ 3 ]{ -q + \sqrt{ q^2+p^3 } } \ \omega + \sqrt[ 3 ]{ -q \ – \ \sqrt{ q^2+p^3 } } \ \omega^2 -\dfrac{A}{3}\\
x_3 = \sqrt[ 3 ]{ -q + \sqrt{ q^2+p^3 } } \ \omega^2 + \sqrt[ 3 ]{ -q \ – \ \sqrt{ q^2+p^3 } } \ \omega -\dfrac{A}{3}
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$$

ただし
$$\begin{eqnarray}
p &=& \dfrac{-A^2+3B}{9} \ , \ q = \dfrac{2A^3-9AB+27C}{54} \\
A &=& \dfrac{b}{a} \ , \ B=\dfrac{c}{a} \ , \ C=\dfrac{d}{a} \\
\omega &=& \dfrac{-1+\sqrt{ 3 }i}{2}
\end{eqnarray}$$

ただし書きの変数もすべて代入して、純粋に $a,b,c,d$ だけで解を表すと、以下のようになります。

3次方程式 $ax^3+bx^2+cx+d=0 \ (a \ne 0)$ の解は
$$\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
x_1 = \sqrt[ 3 ]{ -\dfrac{27a^2d-9abc+2b^3}{54a^3} + \sqrt{ \left( \dfrac{27a^2d-9abc+2b^3}{54a^3} \right) ^2+ \left( \dfrac{3ac-b^2}{9a^2} \right) ^3 } } + \sqrt[ 3 ]{ -\dfrac{27a^2d-9abc+2b^3}{54a^3} \ – \ \sqrt{ \left( \dfrac{27a^2d-9abc+2b^3}{54a^3} \right) ^2+ \left( \dfrac{3ac-b^2}{9a^2} \right) ^3 } } -\dfrac{b}{3a} \\
x_2 = \dfrac{-1+\sqrt{ 3 }i}{2} \sqrt[ 3 ]{ -\dfrac{27a^2d-9abc+2b^3}{54a^3} + \sqrt{ \left( \dfrac{27a^2d-9abc+2b^3}{54a^3} \right) ^2+ \left( \dfrac{3ac-b^2}{9a^2} \right) ^3 } } + \dfrac{-1-\sqrt{ 3 }i}{2} \sqrt[ 3 ]{ -\dfrac{27a^2d-9abc+2b^3}{54a^3} \ – \ \sqrt{ \left( \dfrac{27a^2d-9abc+2b^3}{54a^3} \right) ^2+ \left( \dfrac{3ac-b^2}{9a^2} \right) ^3 } } -\dfrac{b}{3a}\\
x_3 = \dfrac{-1-\sqrt{ 3 }i}{2} \sqrt[ 3 ]{ -\dfrac{27a^2d-9abc+2b^3}{54a^3} + \sqrt{ \left( \dfrac{27a^2d-9abc+2b^3}{54a^3} \right) ^2+ \left( \dfrac{3ac-b^2}{9a^2} \right) ^3 } } + \dfrac{-1+\sqrt{ 3 }i}{2} \sqrt[ 3 ]{ -\dfrac{27a^2d-9abc+2b^3}{54a^3} \ – \ \sqrt{ \left( \dfrac{27a^2d-9abc+2b^3}{54a^3} \right) ^2+ \left( \dfrac{3ac-b^2}{9a^2} \right) ^3 } } -\dfrac{b}{3a}
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$$

まとめ

今回は、3次方程式の解の公式について解説しました。

3解がすべて実数だったとしても、途中式では必ず虚数がでてきます。不思議ですね。

ゆーきち
ゆーきち
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!