今回は、フィボナッチ数列について解説していきたいと思います。
フィボナッチ数列とは
定義
フィボナッチ数列 $\{F_n\}$ とは、次のような漸化式で定義される数列です。
$n$ を正の整数とする。
$$\left\{
\begin{array}{l}
F_1=1, \ F_2=1 \\
F_{n+2}=F_n + F_{n+1}
\end{array}
\right.$$
具体的に、初項から第10項までを書き下してみると$$1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,\cdots$$となります。
定義によっては、最初の2項を「0, 1」や「1, 2」にするなど項がずれることがありますが、ここでは上のような定義に基づいてフィボナッチ数列を考えていきます。
いずれにせよ、フィボナッチ数列は前の2項を足すと次の項が求まるという特徴をもちます。
フィボナッチ数列に出てくる数字のことをフィボナッチ数といいます。
名前の由来
「フィボナッチ数列」という名前は、イタリアの数学者 レオナルド・フィボナッチに由来しています。
ちなみにフィボナッチ数列は彼自身が発見したわけではないんですが、○○数列と呼ばれる数列の中では、最も有名なものになっています。なんだかズルいですね(笑)
フィボナッチ数列の一般項
結論
先に結論、つまりフィボナッチ数列の一般項をお伝えします。
$$F_n=\frac{1}{\sqrt{5}} \left\{ \left( \frac{1+\sqrt{5}}{2} \right)^n-\left( \frac{1-\sqrt{5}}{2} \right)^n \right\}$$
どうでしょう、思ったより複雑な式でしたか?
それでは、この一般項をどのように導くのかを見ていきましょう。
導出
先ほども確認したとおり、フィボナッチ数列の特徴は前の2項を足すと次の項が求まることです。
つまり、フィボナッチ数列は(専門用語的に言えば)3項間漸化式によって定義されているのです。
では、フィボナッチ数列の漸化式
$$F_{n+2}=F_n + F_{n+1}$$の一般項を3項間漸化式の解き方で求めていきましょう。
この漸化式の特性方程式
$$c^2=1+c \quad \Longleftrightarrow \quad c^2-c-1=0$$の解は
$$c=\frac{1\pm \sqrt{5}}{2}$$となります。
今後計算を進めていく中で見た目がごちゃごちゃしないよう、この2解を
$$\alpha=\frac{1+\sqrt{5}}{2} , \ \beta=\frac{1-\sqrt{5}}{2}$$と表すことにします。
$\alpha, \ \beta$ を用いて漸化式を変形すると、
$$ \begin{eqnarray} F_{n+2}-\alpha F_{n+1} &=& \beta (F_{n+1}-\alpha F_n) \tag{1} \\ F_{n+2}-\beta F_{n+1} &=& \alpha (F_{n+1}-\beta F_n) \tag{2} \end{eqnarray} $$という風に、2パターンの式が得られます。
式(1)に関しては、$\boldsymbol{\{F_{n+1}-\alpha F_n\}}$ をまるごと1つの数列だと考えると、この数列は公比 $\beta$ の等比数列になっていることがわかります。
初項は、$n=1$ とすると
$$ \begin{eqnarray} F_2-\alpha F_1 &=& 1- \frac{1+\sqrt{5}}{2} \cdot 1\\
&=& \frac{1-\sqrt{5}}{2}\\
&=& \beta \end{eqnarray} $$となります。
つまり数列 $\{F_{n+1}-\alpha F_n\}$ は初項も公比も $\beta$ だったというわけですね。よって、
$$ F_{n+1}-\alpha F_n = \beta ^n \tag{3} $$となります。
同様に、式(2)についても見ていきましょう。こちらも $\boldsymbol{\{F_{n+1}-\beta F_n\}}$ をまるごと1つの数列だと考えると、この数列は公比 $\alpha$ の等比数列になっていることがわかります。
初項は、$n=1$ とすると
$$ \begin{eqnarray} F_2-\beta F_1 &=& 1- \frac{1-\sqrt{5}}{2} \cdot 1\\
&=& \frac{1+\sqrt{5}}{2}\\
&=& \alpha \end{eqnarray} $$となります。
つまり数列 $\{F_{n+1}-\beta F_n\}$ の方は初項も公比も $\alpha$ だったとわかります。よって、
$$ F_{n+1}-\beta F_n = \alpha ^n \tag{4} $$となります。
見やすいように、改めて式(3)と式(4)を並べて書きますね。
$$ \begin{eqnarray} F_{n+1}-\alpha F_n &=& \beta ^n \tag{3} \\ F_{n+1}-\beta F_n &=& \alpha ^n \tag{4} \end{eqnarray} $$ここから $F_{n+1}$ を消去して $F_n$ を残すため、式(4)-式(3)を計算すると、
$$(\alpha-\beta)F_n=\alpha^n-\beta^n \tag{5} $$となります。
ここで、
$$\alpha-\beta= \frac{1+\sqrt{5}}{2}-\frac{1-\sqrt{5}}{2} = \sqrt{5} $$であることに注意して、式(5)の両辺を $\alpha-\beta$ で除すと、
$$ \begin{eqnarray} F_n &=& \frac{ \alpha^n-\beta^n }{ \alpha-\beta }\\
&=& \frac{1}{\sqrt{5}} \left\{ \left( \frac{1+\sqrt{5}}{2} \right)^n-\left( \frac{1-\sqrt{5}}{2} \right)^n \right\} \end{eqnarray} $$となり、無事(?)結論で示した一般項を示せました。
最初の2項が「1, 1」でない場合
ここまでは、フィボナッチ数列の最初の2項を「1, 1」とする最も一般的な場合のことを考えてきました。
では、最初の2項が「1, 1」ではない場合、どのような一般項になるのしょうか。
ということで、ここでは最初の2項を「$a,b$」と一般化した場合、つまり
$$F_1=a, \ F_2=b$$とした場合の一般項について考えてみたいと思います。
「前の2項を足すと次の項」というルールは変えません。
漸化式の特性方程式の2解
$$\alpha=\frac{1+\sqrt{5}}{2} , \ \beta=\frac{1-\sqrt{5}}{2}$$を用いて漸化式を変形すると、
$$ \begin{eqnarray} F_{n+2}-\alpha F_{n+1} &=& \beta (F_{n+1}-\alpha F_n) \tag{6} \\ F_{n+2}-\beta F_{n+1} &=& \alpha (F_{n+1}-\beta F_n) \tag{7} \end{eqnarray} $$となる所までは先ほどと同じです。
ここから最初の2項を変えた影響が出てきます。
式(6)の数列 $\{F_{n+1}-\alpha F_n\}$ は公比 $\beta$ の等比数列です。
初項は、
$$ F_2-\alpha F_1=b-\alpha a $$となります。よって、
$$ F_{n+1}-\alpha F_n = ( b-\alpha a )\beta^{n-1} \tag{8} $$となることがわかります。
同様に、式(7)からは
$$ F_{n+1}-\beta F_n = ( b-\beta a )\alpha^{n-1} \tag{9} $$という関係が得られます。
式(9)-式(8)を計算すると
$$(\alpha-\beta)F_n=( b-\beta a )\alpha^{n-1}-( b-\alpha a )\beta^{n-1}$$となります。
この両辺を $\alpha-\beta$ で除すと、
$$ \begin{eqnarray} F_n &=& \frac{ ( b-\beta a )\alpha^{n-1}-( b-\alpha a )\beta^{n-1} }{ \alpha-\beta } \\
&=& \frac{1}{\sqrt{5}} \left\{ \left( b-\frac{1-\sqrt{5}}{2}a \right) \left( \frac{1+\sqrt{5}}{2} \right)^{n-1}-\left( b-\frac{1+\sqrt{5}}{2}a \right) \left( \frac{1-\sqrt{5}}{2} \right)^{n-1} \right\} \end{eqnarray} $$となり、これが求める一般項です。
当然ながら、$a=b=1$ を代入すると元々の一般項に戻ります。
ぜひ確かめてみてください。
まとめ
今回は、フィボナッチ数列の定義や一般項の導出についてまとめました。
フィボナッチ数列はその性質の面白さから、よく大学入試の題材として選ばれます。
どんな性質があるのかについては、またの機会にお伝え出来ればと思います。